読書感想:週に一度クラスメイトを買う話4 ~ふたりの時間、言い訳の五千円~

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:週に一度クラスメイトを買う話3 ~ふたりの時間、言い訳の五千円~ - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、どんどん二人の時間の終わりは近づいてきている訳で。それぞれの進学、という形でのお別れは近づいてきている訳であるが。当然、志緒理と葉月が簡単にお別れ出来る訳ではない、というのは画面の前の読者の皆様も何となくお察しであろう。もはや五千円、という建前というのは鎖の役目を放棄し始め、建前のような意味も薄れてきて。心の内ではもっと、もっとと二人の時間を望んでいて。だけど、それがきちんと言えたのならば苦労はしない、というのも画面の前の読者の皆様ならご存じであろう。

 

 

「あー、もう。面倒くさい」

 

ルールを破る事に躊躇いはなくなってはいるけれど、それでも葉月が素直にいいと言ってくれるとは思えない、だから五千円ではなくて交換条件を、とは思うけれど面倒くさい、と言い訳したりして。

 

「ただ交換条件なら、もっとちゃんとしたキスしてよ」

 

だけど呼べば来てくれる、ルールを破って。交換条件としてキスをして、恋人同士でもないのに。

 

「こんな部屋だっけ」

 

彼女がいない、自分の部屋に。それが何故か落ち着かない。その落ち着かなさを、友人にも何となく感づかれる。友達と過ごす、それは居心地の良いものの筈なのに。何故か彼女がいない事が、落ち着かなくて。

 

もうお察しであろう。五千円から始まった二人の関係は、最早二人にとって唯一無二、当たり前の関係になっているのだという事を。 刻限が来てもきっと手放すことはできない、それは分かっている。その筈だけど。面倒くさい二人は何だかんだ、と自分の心に理由を付けて。その先に進む言葉、を出そうとしない。

 

 

だけど時間は容赦なく進んで、二人の時間の終わりは既にもう近く。繋がりの証を回収しようとする志緒理、そんな彼女へと葉月は一種の強引な手を使って、距離を詰めていく。

 

「他人と生活するくらいなら、私にしときなよ」

 

それはまだ、終わらぬ二人の関係へのいざない。今度は同級生、としてではなく同居人として。貯めていた五千円も使って、一種行き当たりばったりに強引な手を取って、葉月に選択肢を提示して。 ネックレスという二人の関係を終わらすか、それとも同居人という関係に進むか。 その果てに志緒理が選ぶのは、あと少し、四年だけ、というロスタイム。

 

「・・・・・・先に向こうで待ってるから」

 

「うん」

 

少しだけ素直になって、彼女達を待っているのは新たな日々、新たな関係。まだ終わらない、もう少し続くのである、彼女達の関係は。

 

一つの結実、新たな始まりとなる今巻。シリーズファンの皆様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: 週に一度クラスメイトを買う話4 ~ふたりの時間、言い訳の五千円~ (ファンタジア文庫) : 羽田 宇佐, U35: 本