読書感想:週に一度クラスメイトを買う話 ~ふたりの時間、言い訳の五千円~

 

 さて、この世にはいくつものお金で結びつく関係性と言うものはある訳であるが。個人的な所見を言わせてもらうのならば、そのような関係は金の切れ目が縁の切れ目、というように脆さを持っていると思う。否定するわけではないが、そのような関係は歪で脆さを持っていると思うので、いずれそういった関係性からは脱却するべきではないかと思う。

 

 

と、言う訳でこの作品の内容に触れていく訳であるが。この作品はガールミーツガール、一言で言ってしまうとガルコメという分類に属する作品である。だが、従来のガルコメは割と明るめ、ポップで弾けるような作風が多いと思われるが、この作品は始まりからすればそんな事はない。

 

 何故かと言われればこの作品のタイトルを見て欲しい。そこに全ての答えが込められているのだ。お金で結びついた名もなき関係、それがこの二人の関係性なのである。

 

「・・・・・・じゃあ、五千円分働いて」

 

スクールカースト二軍の下、友達の少ない志緒理(表紙左)。スクールカースト上位の下、友達も多いしモテる葉月(表紙右)。普通に考えれば交わらぬ関係。関わる事もない関係。そんな二人の関係は町の書店、葉月が財布を忘れた所で志緒理が代わりに五千円で払った、という所で交わり。おつりもそのままあげる、という志緒理に葉月が反発し、気紛れに志緒理が提案した五千円分の働きに葉月がノッた事で始まる事となる。

 

家に招いて漫画の音読から始まり、時に一緒にお菓子を食べたりゲームをしたり、と普通の友達らしい時間を過ごしたかと思えば、彼女の気紛れで足にキスさせたり、と時には危ない命令も飛び出してくる。

 

そう、「命令」である。週に一度、五千円で。一方的な貸しから始まった関係は、お金を対価に命令という形で結ばれる。そのまま続いていく事となる、何気ない関係が何気ない日々の中で。

 

別に葉月でなければいけない理由もない、志緒理の頭のネジは十本くらい飛んでるなと思うけれど、この関係を拒むような嫌悪もない。だけど二人の関係は「友だち」ですらない。ならばこの関係は何なのだろう? 二人の関係に何と名前を付けるのが正解なのであろう?

 

そんな事に思いを巡らせれど答えは出ず。だけどいつしか、何気ないこの関係が特別になっていく。日々の生活、他人に合わせストレスを受ける学校生活。そんな生活がいつも通りに続く中、いつしかこの関係に何気ない特別さが出てくる。

 

「じゃあ、命令しなよ。そういう約束なんだから」

 

それもまた当然であったのかもしれない。二人は似ていないようで、中途半端という等身大さで似ている。そしてお互いがお互いに、何か心の何処かで求めていたものを見出している。故に、心揺れてもこの関係を離さない。それどころか覚悟を決め、一歩踏み出していかんとするのである。

 

何気ない日々の中の、時にめんどくさい心の動きが地に足の着いた面白さを出しているこの作品。等身大のガルコメが見てみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

週に一度クラスメイトを買う話 ~ふたりの時間、言い訳の五千円~ (ファンタジア文庫) | 羽田 宇佐, U35 |本 | 通販 | Amazon