前巻感想はこちら↓
読書感想:週に一度クラスメイトを買う話 ~ふたりの時間、言い訳の五千円~ - 読樹庵 (hatenablog.com)
勝手に求めて、勝手に望んで。思いは止められなくなって、だけど中々踏み出せずに勝手な理由を付けてもだもだして。志緒理と葉月の、ガルコメ未満のガルコメな訳であるが。そも、発展を望めど、そもそも発展して何かいい事があるのか。つまり面倒くさい彼女達の関係は、中々変わる事が無いのだ。
「もうすぐ一年だっけ?」
何か大きなことが普通は起きるかもしれない体育祭、しかし彼女達にとっては何でもないイベント。去年の体育祭はつまらなかった事しか覚えていない、今年の体育祭は最後である筈なのに、そも印象に残らない。あっさりと体育祭を終わらせ、早くも夏休みを迎えようとしている中。志緒里と葉月が五千円と言う金額で結ばれてから一年、という時を迎えようとしていた。
「勉強教えてあげるから」
迎える夏休み、しかし休み中は会わない、という約束。だけど高校三年生の夏休みを迎えても、特に勉強を始める様子が無かった志緒里を葉月は心配して。三回五千円、という新たな形での契約は結ばれ、彼女を家庭教師として夏休み中も合う日々が始まる事になる。
また始まる、未だ名前のない歪な関係。だけどそれは、去年までとは異なる彩を持っていて。知らない顔がどんどん出てくる、こんなあなたは知らない、あなたじゃない、という思いが芽生えてくる。
「やっぱり、私と仙台さんは友だちにはなれないと思う」
なればこそか、ちょっと違う関係を求めてみて。だけど「友達」として一日を過ごしてみて。結局分かったのは、友達にはなれないという事。考え方も違う、趣味も合わない。一緒に居て、何か特別である訳でもない。だからこそ、二人の関係は「友達」という言葉では成り立たない。
ならば、何と名付ければいい? 何と変わればいい、なればいい?
「じゃあ、卒業式まで、私が呼んだら今まで通りここに来て」
その答えは未だ、見えてこない。いつの間にか五千年と言うお金は、二人を縛る鎖のようなものへと変わっていく。そんな中で、明確に定められた期限。残り半年くらい、長いようで短いその期限。何かが起こるには足りないかもしれない期間の中、もどかしくて面倒くさい二人の関係はどこか別の方向へ変わっていく事になるのだろうか。
何かが変わりだし、ように見えて何も変わらない、ように見えて何かが動き出す今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
Amazon.co.jp: 週に一度クラスメイトを買う話2 ~ふたりの時間、言い訳の五千円~ (ファンタジア文庫) : 羽田 宇佐, U35: 本