読書感想:あなたを救いに未来から来たと言うヒロインは三人目ですけど?

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未来人、それは未来から来た人。例えば某ハルヒのあのお方のような人。では、そんな異質な存在ともいえる登場人物がキャスティングされている作品を読んだ事のある画面の前の読者の皆様は、どれほどおられるだろうか。タイムリープ系の作品において、どんなところが見所であると思われるだろうか。

 

そも、タイムリープとは言わずもがな、同じ時間を繰り返すと言うものである。某エンドレスエイトの例を連想していただければ、イメージは容易いかもしれない。では繰り返して何を探そうとするのか、掴もうとするのか。

 

 お分かりいただけただろうか。タイムリープするという事は何らかの原因がある事が多く、それを乗り越えなければ未来へ進めない事も多い。では、この作品において未来へ進む条件とは何か。それは「主人公の死の運命を乗り越える事」である。

 

大人の世界を知っていてある程度の力を有していること以外は普通の少年、巴。高二の春、彼に突然訪れた人生初のモテ期。

 

それはラブコメの始まりを告げる音・・・だったら良かったのかもしれないが、彼のラブコメはちょっぴり特殊な状況から始まった。隣の席の、今まで関係のなかった少女、明華(表紙)の突然の告白。それは彼女が未来から来たという、にわかには信じがたい告白も伴っていたのである。

 

彼女は告げる、貴方はこのままでは事故に巻き込まれたり、襲撃されたりして死んでしまう。だからこそ私は、貴方を救いに来たと。

 

そんな荒唐無稽な事を言うのは彼女だけではなく。バイト仲間の後輩、春も、又従姉であり幼馴染の海空も、自分が未来の彼女であり巴を救う為に来た、と告げてくる。

 

にわかには信じられない筈だった、だが球技大会も迫る中、明華の預言した通りに彼を狙った事故は巻き起こる。

 

なれば、もう信じるしかない。海空に提供された謎の会話プログラム、「ラビット」の助けも得て、巴は生き延びる為に事態の解決へと挑んでいく。

 

 だが、それはどうしても痛みを伴う路である。観測される事態を防ぐために、未来の事実を他の人に知られてはいけないという制約の中、明華達が何度も傷つき、死んでいくのを目の当たりにし。いくら試行すれども、逃がさないと言わんばかりに彼を襲う事件はどの世界線においても続く。

 

「考えるまでもないか。―――全力だ」

 

だが、それでも彼は諦めない。彼女達の想いを受け、死にたくないと願ったから。彼女達に傷ついてほしくないと思ったから。生き延びたいと思ったから。

 

ヒロイン達に弄られたり、弄り返したり。打てば響くと言わんばかりにテンポの良い、明るめのラブコメにSFとサスペンスを絡めるとどうなるのか。

 

その答えがこの作品である。二つの要素の温度差が見逃せぬギャップとなっている、一味違った面白さのある作品なのである。

 

SF要素のあるラブコメが好きな読者様、ドタバタなラブコメが好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

あなたを救いに未来から来たと言うヒロインは三人目ですけど? (ファンタジア文庫) | 氷純, うらたあさお |本 | 通販 | Amazon