読書感想:依存したがる彼女は 俺の部屋に入り浸る

 

 さて、この私、真白優樹は何処からどう見てもラノベ依存症、かもしれない恐らくは。別にそのことを後悔している訳もないし、寧ろそれが私なのだと自負している訳であるが。それはともかく、依存というのはその言葉だけではマイナスのイメージがつく事が多いであろう。例えばラブコメにおいて依存系なヒロインと言えば、重めであることが多く、人を選ぶことも多い。そして例えば、ギャンブルや麻薬には絶対依存してはいけないのである、心の健康的に。

 

 

 

ではこの作品における「依存」、とは何なのであろうか。それはこれから読んでいきたい次第であるが。一先ず言えるのはこの作品におけるヒロイン共、一般的に見れば多分奇特なタイプに分類されるタイプのヒロインであり。いずれも曲者に過ぎるヒロイン揃いなのである。

 

片田舎から一人首都圏に出て来て三か月。都会の大学に通いながら、割といいマンションの部屋で、大家のお婆さんの小間使いになると言う条件の元に格安で住んでいる青年。この作品の視点の主、語り手である「僕」。

 

「さあ、君も座って乾杯しようじゃないか」

 

「それじゃあ、あたしはそろそろ戦場に向かおうかしら」

 

「実家じゃこんなこと出来ないからね」

 

そんな彼の部屋に、同じ文芸サークルの一員であり大酒豪でもある春香(表紙)がちょうどいい部屋を見つけた、と入り浸るようになり。更にはいつも代返を頼んでくる、アニメ好きが高じたパチンコ好き、夏希までもがやってきて。更にはゼミの同期である喫煙者、冬美がいい喫煙場所を見つけた、と入り浸るようになって。気が付けば彼の部屋は三人のたまり場、宅飲みでのどんちゃん騒ぎの場へと変えられていく。主人公の意思も無視して。

 

「・・・・・・ねえ。やっぱり部屋に押しかけて、迷惑だった?」

 

時には何故か四人でAVを見ることになったり。パチンコで大負けした夏希を慰める為、月曜日から飲み会を開催する事になったり。ちょっぴり苛々しつつ、結局言っても流されて。だけど何だかんだ、この四人でいることが心地よくて。爛れた関係になるか、と思いきや「僕」のあまりにもな無味乾燥さと、ある意味さっぱりとした彼等の関係により。ラブコメ、みたいな色を仄かに漂わせつつも。何だかんだとぐだぐだで、ぬるま湯のような関係が続く中。文芸サークルの合宿で、「僕」は動く。実は過去に事情を抱えた春香に、ちょっとしたお節介を焼くために。

 

 

「君に会えて本当によかった」

 

その彼の行いに、春香の中で。お酒に寄りかかり依存していた部分が変わっていく。お酒だけでは足りぬ、大切なものを、と。彼の事を求めていくのである。

 

割と変化球、真っ直ぐなぬるめのモラトリアム。仄かに香る、かもしれぬラブコメが読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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