読書感想:犯罪迷宮アンヘルの難題騎士

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。今、この世界には様々なファンタジー作品が溢れているであろうことを既にご存じであろう。ファンタジーと言えばダンジョン。そう言わんほどに、ダンジョンものも多い昨今。では、ダンジョン内の秩序というものはどう保っている印象があるであろうか。ダンジョン内は自己責任、そういう風潮が強いのではないだろうか。

 

だがしかし、この作品においては迷宮、つまりはダンジョンの中の秩序を守り、ダンジョンの中で起きた犯罪を解決し、犯罪者を取り締まる組織が存在する。その名は「迷宮騎士隊」。ギルドに所属する冒険者達と時に協力しながらも、一部の者達から疎まれる微妙な位置に属する組織である。

 

そんな組織に在籍する騎士の一人であり、「魔血石」と呼ばれる魔力を内包した鉱石を用いた武器の一種、「魔光銃」を用い戦う青年、カルド(表紙右)。

 

いつも事件に追われる彼、そして騎士隊へある日、一人の女性騎士が配属される。彼女の名はラトラ(表紙左)。上昇志向の強い、生まれからしてエリート騎士。

 

 

「・・・・・・そのまま死んじゃうなら、それもいいかもね。完璧な騎士じゃいられない今のあたしなんて、もう生きていく価値もないから」

 

が、しかし。一皮むけば彼女は只の未熟な騎士。「完璧な騎士」、「正義の味方」という青臭い理想を掲げながらも何の力も持たず、すぐ現実に折れ自分の殻に閉じこもるような未熟者であったのだ。

 

「・・・・・・なんもわかんねぇ。だから教えてくれよ、オメェの事」

 

彼女のお守り、そして相棒となる事を命じられ。カルドは時に冷たくしながらも真っ直ぐに彼女を見つめ、まずは色々な話をする事から始めていく。

 

ここから始まる。何もかもが正反対の凸凹な二人。二人の相棒道も騎士道も。二人は共に迷宮を騒がす、若い女性を狙った連続殺人事件を追いかけていく。

 

「銀狼の魔獣」という誰も知らぬ魔獣を追う謎の少女、シェミル。突如現れた、騎士団よりも上の立場である聖堂教団の騎士、レイシア。

 

推理し様々な道から真実を追う中、交わっていく様々な者達の思いと願い、そして黒幕の邪なる思い。

 

「・・・・・・まだ”世界”を知らない、まっすぐな若者には少々酷な話だったかな?」

 

何度も阻まれながらも必死に真実を追い求め、だけどその果てに「彼女」を見送り。そして真実は上の者達の政争の道具へと変えられ、真実は闇へと葬られる。

 

そう、葬られてしまうのだ。事件の真相は是非に画面の前の読者の皆様自身の手で確かめてほしい。だがしかし、予め言ってしまうと真相は残酷であり、ほろ苦いものとなる。

 

忘れてはならぬ、カルドとラトラもまた組織の駒である。駒がどんな理想を抱こうが、駒を操る操り手の意向には逆らえぬ、のかもしれない。

 

それでも諦めきれぬ理想がある。そしてその道を共に進んでくれる相棒がいるのなら、信じて進めるのだ。

 

 

相棒同士の絆が好きな読者様、クライムファンタジー系の作品が好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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