読書感想:ギャルに優しいオタク君

 

 さて、オタクに優しいギャル、というのは多分いないとして(少なくとも私は見たことがない)。オタクという人種は最近はごく普通の存在となってきている訳であるが、オタクは舐めてはいけない。何かに熱中し磨き上げたスキルが何の役に立つかなんて誰にも分からないのである。私とてかなり癖があると言う自覚があるがこの文章の書き方は私だけの武器である、という思いが多少はある。という訳で。今作品はそんなオタクのスキルが、ギャルの助けとなって始まるラブコメなのである。

 

 

「これなら、出来ると思う」

 

絵を描いたりプラモデルを塗装までこなしたり。多趣味なオタク趣味を学校では隠す少年、浩一(表紙右)。彼へと気紛れに話しかけてきた斜め後ろの席のギャル、優愛(表紙左)。彼女が見せたのはネイルの動画と、自分でやってみて失敗した実例。その動画を見、浩一はプラモデルの塗装と似たものかと認識し、優愛の頼みを引き受け望み通りのネイルの塗装に成功する。

 

更に彼のスキルは留まる事を知らない。優愛がこういう髪型をしてみたい、と言えばエクステの応用でそれを実現し。友人であるリコこと瑠璃子をイメチェンさせたいと言う願いを、ドールの化粧の応用で自分なりに解決して見せる。

 

その根底にあるのは人としての誠実さ。依頼にきちんと向き合い、全力で成果を出すべく事前に学び準備をし。そんな彼のスキルの活かし方が優愛の心をつかみ、更には瑠璃子とも友情を築かせて。彼女達から誘われ服を買いに行ったり、三人で温水プールに繰り出したり。三人で行動する機会も増えていく中、オタクのスキルは無限大と言わんばかりに様々な引出しからどんどんとスキルが溢れ出す。

 

そんな彼に、優愛の友人であるギャル達も見直し彼を頼りにするようになり。彼に仄かな恋心を抱く委員長も、大胆なイメチェンを果たし。更に季節が廻り遠足や学園祭、体育祭と言ったイベントがやってくる中で。そのスキルがみんなを助け、気が付けばクラスの中心になっていくのであった。

 

無論、それだけではない。優愛との密かな育む恋も、少しずつ進んでいく。気が付けば彼女の中で彼を想う気持ちが、少しずつ高まっていくのである。

 

彼を中心に展開する群像劇的な描き方で様々な人物に視点を当てて、青春の様々なものを混ぜ込んだと言わんばかりに青春が繰り広げられる。正に大盛の青春が楽しめるこの作品。青春ラブコメ、というものの大枠を楽しんでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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