読書感想:氷結令嬢さまをフォローしたら、メチャメチャ溺愛されてしまった件

 

 さて、身分差恋愛、というのは遥か昔の演劇作品から今現代に至るまで様々な作品が存在している訳であるが、身分差恋愛というのは古い作品においては悲恋に終わる事も多い。例えばロミオとジュリエット然り、ローマの休日しかり。ハッピーエンドに終わるのは、現代の作品から、と言えるかもしれない。

 

 

では身分差恋愛、というものに関する面白さとはどんなものか。それはやはり、その身分差というのを乗り越える努力と言うのが面白いと言えよう。この作品ではどうなのだろうか。

 

それはここから語っていきたい。さぁさぁ寄ってらっしゃい見てらっしゃい、これより綴られますは平凡な少年の、恋物語と言う訳である。

 

貴族や平民、と身分差が存在するとある異世界。かの異世界の貧民出身の少年、グレイ(表紙右)。貧民にとっては唯一の立身出世の手段である騎士学院に入る為のお金を飲んだくれの父親に奪われ、怒りのままに父親をぶちのめして家出して。行く当てもなく、見つけたのは公爵家での掃除係の求人。

 

「今後は常に、ワタクシの傍だけに仕えなさい」

 

住み込みのその仕事で出会ったのは、公爵家令嬢であるアリシア(表紙左)。冷たい物言いしか出来ぬが故に、「氷結令嬢」と呼ばれる彼女。だけど彼女は物言いが不器用なだけで本性はどこまでも優しい、当たり前の少女。その内面をグレイだけが見抜いた事で、アリシアは彼を気に入って。専属の使用人、「通訳係」としてグレイは使える事となる。

 

アリシアの幸せを願うが故に、忠義を尽くし。彼女の本心を引き出していくグレイ。そんな彼を、アリシアが気に入らぬ訳もなく。

 

「頭を撫でる許可をあげなくもないわよ」

 

そして、彼女にとって彼は、自分を出せる唯一の相手となっていく。だからこそ彼女は常にぐいぐいと、全力で。学友のイメチェンをしたり、夜会に出たりの日々の中。少しずつグレイに甘え、寄りかかる事が増えていく。

 

だけどこれは、この想いは。許されぬ、平民と貴族、それ故に。故に公爵家よりあてがわれた婚約者、グラントにより二人は引き離されそうになり。あまつさえグレイが毒を盛られてダウンする。

 

「ぶん殴らせていただきます」

 

「グレイはワタクシの専属使用人。ワタクシが勝てと言えば、勝つに決まっているのよ」

 

・・・もはや間に合わぬのか、答えは否。覚悟を決めた少年が、彼女にとっての王子が間に合わぬ道理は存在せず。そして、勝利を信じてくれる姫がいるのなら、どれだけの格上が相手であっても、騎士の勝利は揺るがないのだ。

 

こういうのでいい、こういうのがいい、こういうのだからこそ、面白い。どんな壁も二人のパワーで乗り越えていく、王道ど真ん中の恋路を突き進むこの作品。故にこの作品は何処までも真っ直ぐに面白いのである。

 

王道的な身分差ラブコメに萌えたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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