読書感想:勇者パーティーを追放された精霊術士 1 最強級に覚醒した不遇職、真の仲間と五大ダンジョンを制覇する

 

 

 さて、精霊と呼ばれる存在はファンタジーを舞台とする異世界においては時々見かける存在であるが、精霊術というのをあまり見かけない気がするのは私だけであろうか。実際、「精霊術」というのを見かけないのなら何故だろうか? 基本的に同じ作品に存在する「魔術」のような存在と役割が被っているからであろうか。と、そんな話はさておきこの作品の中の「精霊術士」という存在について言えば、支援中心の不遇な存在である。

 

 

 

魔物やダンジョンといった存在が基本なとある異世界。かの世界において、幼馴染同士で作られた勇者パーティ、「無窮の翼」。その一員であり、普段は精霊術を生かして支援を担当する青年、ラーズ(表紙左)。彼はある日、幼馴染である勇者、クリストフ達によって追放され。一先ず行く当てを無くす。

 

「この先の道、一人では進めぬ日が来る。命を預けられる真の仲間を見つけるのだ」

 

「良かった。間に合った」

 

 

 そんな彼を自らの世界に引っ張り込んで接触してきたのは、全属性の精霊を統べる、精霊王。窮地にある彼に、前倒しで新たな力を託した王は言う。残り四人の精霊王とも会う為に、全てのダンジョンの踏破記録を消して一からやり直せと。彼の元に、他パーティながら彼を慕う少女、シンシア(表紙右)がパーティを抜けて合流し。二人で「始まりの街」からやり直していく事となる。

 

始まりの街、全ての冒険者にとっての始まりの地であり、いつか通り過ぎられる場所。そこに変わらずいる人達と交流したりしながら、まずは最初のダンジョンから攻略を始め。もはや懐かしさも感じる、実力者となった今では生温い程の場所を駆け抜けていく。

 

 しかし、そんな生温い展開だけで済む訳はないだろう。それも当たり前である、そんな優しい展開だけでは薄っぺらい。突如現れたのは、どう考えても「始まりの街」には似合わない強敵である未知の魔物。伝説にのみ名を残す「魔王」の配下である「魔族」の一体が二人を狙い襲い来る。

 

既にかなりの実力者である二人を追い詰めるほどの強敵。普通の攻撃すらも通用しないかの敵を倒すための鍵は、精霊術。一般的にはその有用性を知られていない、しかし本当は伝説に名を残す程の力。その力の真価の一端が紐解かれる時、今まで知られていなかった精霊が目を覚ます。

 

 

彼等の知らぬ所で、「無窮の翼」は少しずつ崩壊の道を辿り始め。それを知らず、シンシアと言う真の仲間を得たラーズは、充実した時を過ごしていく。

 

「ああ、追放されてよかったな」

 

そんな言葉が自然に出るくらいに。充実した時を過ごすことが何よりの復讐。それを叶えながら、ラーズは大きな戦いに向かっていくのである。

 

追放ものの王道な面白さが詰め込まれた今作品。追放ものが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。