読書感想:外れスキルの追放王子、不思議なダンジョンで無限成長

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 さて、昨日も追放ものに関する作品の感想を投稿したわけであるが、その時に挙げた、個人的疑問というものに関しては該当する感想を見ていただくとして。追放されると言う事は、一体なぜであるのか。追放ものというジャンルの中において一つの理由であるのが「所持している力が無能だと判断された」という理由である。が、追放ものを嗜まれる画面の前の読者の皆様であればもうお分かりであろう。無能と判断されたスキルは、往々にして見方を変えさえすれば有能であったりすると言う事を。

 

とある異世界のとある王国。そこに、妾腹の生まれで在り王宮で差別されながらも凛として生きる、十二番目の王子がいた。

 

 彼の名前はアンリ(表紙中央)。その身に秘めたスキルは「劣化無効」という、一見すると何の意味も無さそうに見えるスキルである。

 

それもまた当然であろう。この異世界にはダンジョンだって存在するけれど、人間皆一度死んだら終わりなのは何も変わらない。故に劣化無効には何の意味もない―――

 

―――と思われていた。だが、彼のスキルを活かせる唯一無二のダンジョンが、名ばかりの領主として追放された辺境の地に存在していた。

 

そのダンジョンにおいては、何度死んでも初めから、蘇生した状態でやり直せる。無論、蘇生されたらステータスは初期化されてしまうけれど、「劣化無効」を持つアンリだけはその制約を受けない。

 

ダンジョンを管理する、お茶目で小粋な人格にも導かれ、何度も死に戻りながらも生きる為に力をつけて、幾つもの基準点まで踏破し、失われた古代文明の遺産を手にし。

 

ダンジョンで手懐けた狼、ガヴリール、草原で出会った奴隷だったエルフの姉妹、トール(表紙左)とシーラ(表紙右)を仲間とし、ダンジョンを拠点とし、自分達が生きやすいように辺境の開拓を始めるアンリ。

 

だがしかし、彼は自身を討ちに来た異母兄である第八王子、エイスとの戦いを切っ掛けに知る事となっていく。この国で王族が「悪魔の一族」と呼ばれ、内外に不幸をまき散らしているという事を。王族たちが、辺境の地にも数々の不幸をまき散らし悲しみを呼んでいるという事を。

 

「―――俺は違う」

 

けれど、彼は自分は違うと己の道を往く。この身に流れる血からは逃れられないけれど、それでも自分の信じる道を往く。自分でありながらも自分でない道を往く。それが復讐になると信じて。

 

だが、そんな何処か危うくとも真っ直ぐに主たる道を進んでいく彼だからこそ、その周りには沢山の人達が集うのだろう。

 

無理のない展開から繰り広げられる、独特の熱さが面白いこの作品。

 

追放ものが好きな読者様、熱い作品が好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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