読書感想:腕を失くした璃々栖 弐 ~明治悪魔祓師異譚~

 

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読書感想:腕を失くした璃々栖 ~明治悪魔祓師異譚~ - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、私は先に残念なお知らせをしなければならない。この明治ロマンあふれる、独特の癖の強さとコクを持ったこの作品は、第一部完となる今巻で一度完結を迎えるという事を。残念である、とても面白い作品であったので。さてそれはともかく、今巻のお話である。各国の中枢に悪魔が食い込んでいると言うこの世界。しかし、歴史は我々の知っている通りに進むこの世界。ではこの世界においては今度は何が起きるのか。

 

 

それは、歴史を学ばれた事のある読者様であればご存じであろう。日露戦争と言う単語を。バルチック艦隊の撃滅等、奇跡的な戦場もありながら、数々の悲劇的な戦場もあり、多くの兵士が散った戦争であり。魔界に向かう前に、リリスとその臣下である皆無もそこに絡む事となるのである。

 

「誰も、日本を国として認めて呉れなくなる」

 

だがこれは忘れてはいけない。人間の戦争は人間で解決しなければいけない。リリスも、その臣下である皆無も根本的には関わってはいけない。悪魔の力を利用し世界を相手に戦う事になったら、同盟国まで相手にしなければいけなくなる。

 

故に、やれるのは直接的には関わらぬ手助けのみ。それをこっそりと為しながら、いよいよ彼等は、陸軍最強である聖人、神威中将を護衛に魔界へと乗り込んでいく。

 

だが、やはりその旅路は簡単にはいかなかった。ベヒモスの配下の悪魔の罠を突破するも、死者の中に落ちてエーテル体を食い荒らされた事で皆無が幼児になってしまい。路銀を無くしてコロシアムに出場したと思えば、エキャンバスという謎の人形を拾い、皆無がそれに乗り込んでとんでもない力を発揮して。

 

悪魔版の現世とでも言わんばかりに、割と発展している魔界を舞台に。移動城塞起動の鍵となるサブナックの大印章を持つ者を探し求めて。

 

 

だがやはり、事態はいつでも突然に混沌となる。突然の裏切り、現世の戦況に呼応するかのように、魔界での戦いも混沌を増し。それまでの味方が敵となる中、力を取り戻した皆無がリリスを救う為に駆け抜ける。

 

「予は、そなたを愛しておる」

 

その戦いは何のために、改めて言いたい事を伝える為に。もう一度結ばれた愛は、即席のとんでもない連携を生んで。事態を終わらせる一撃を放つ事となるのだ。

 

その先に待っているのはどんな戦いなのか。いつかその続きが見られる事を願いたい。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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