読書感想:迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について4

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について3 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で明人とシャーロットは結ばれ恋人同士として付き合いだしたわけであるが。ネコクロ先生の作風を知っておられる読者様がおられたら、果たしてここから二人の甘々がずっと続く、と思われるだろうか。先に言ってしまえばそんな事はない。私が思うにかの先生は、甘々と言うより障害を出して二人で乗り越えていく系の、ちょっぴりビターなラブコメの大家である。と、いう訳で。そう簡単に甘々真っ盛りにはさせないよ、と言わんばかりに第一の試練が襲い掛かってくるのが今巻なのである。

 

 

「私たちの関係は、ずっと隠していくのでしょうか?」

 

付き合いだして迎える初めてのハロウィン。エマに餌付けしたり、シャーロットと仄かな触れ合いを伴ういちゃいちゃをしたり。シャーロットの嫉妬深さが垣間見える中、ふと思うのはこの関係を明かすのか、という疑問。やはり誠実でありたいし、男除けにもなるからというシャーロットの願いに応じ。明人は二人の関係を明かす事に決める。

 

「随分と楽しそうですね、明人先輩?」

 

が、しかし。ここまで読まれている読者様ならご存じであろう、明人がどう思われているかについて。当然騒動と波乱が起きぬ訳もなく、女子の方は味方となるも男子の方は微妙な反応で。さらに追い打ちをかけるように、中学時代の後輩である楓が現れる。

 

中学時代の後輩、という事はどういう事か。それは明人の過去を知るという事。もう隠しておけぬ。シャーロットに語るのは明人の、あの日何があったのか、という過去。大人の思惑に巻き込まれ最悪の事態に間に合わず。結果として自分一人で悪名を背負い込んだと言う、勝手に半ば強引に背負わされた重荷。

 

それを清算する、というのは今更出来ぬかもしれない。もう絆は壊れてしまった、過去は変えられるものではない。

 

だけど今、何かを変えていくことは出来る。今までの明人ならば引いていたであろう、何もしなかったであろう。だけどそんな過去も背負って歩いていくために。球技大会で彼は、己にとって全てがそこに在ったサッカーへと再び向き合う事となる。

 

「・・・・・・明人君なら、大丈夫です」

 

ブランクだってある、今までのものは全て失っている。だけど今、自分を信じてくれる人がいる。好いてくれる人がいる。その人の前で、無様を晒すわけにはいかない。折れかけた足に力が宿り、竦みそうになる背が押し上げられる。ならばもう、負ける道理はどこにもない。

 

「うん、隣にいてくれるシャーロットさんや、彰、学校の人たちのおかげでね」

 

それは目の前の好敵手にも、過去にも。もう一人で抱え込まない、心配してくれる人がいるから。そう、やっと彼は過去を振り切る事に成功し。大きく一歩踏み出したのである。

 

その一歩が周囲の納得と言う壁を乗り越える。だけどきっとまだ、壁は来る。恐らく最低二つは何かありそうなフラグがある。だけどきっと心配はいらぬだろう。皆と居るのなら。

 

支えられ過去を乗り越える、瑞々しい輝きのある今巻。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について 4 (ダッシュエックス文庫) | ネコクロ, 緑川 葉 |本 | 通販 | Amazon