読書感想:迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について3

 

 

 さて、前巻で少しずつ、明人の仮面の裏に隠された優しさに溢れる部分が見えだし、彼が抱えている問題が見え始めた訳であるが。明人のその問題に、真正面から向き合うべきなのは誰なのか、というと勿論シャーロットである。エマを間に挟み、まるで家族のように向き合う彼女。だが勿論これはお分かりであろう。そも、最後に向き合うのは彼女自身でなくてはならぬのだと。エマに癒すことは出来ても、受け止める事は出来ぬ。だからこそ最後は彼女の役目なのである。

 

 

「うん、明らかに意識してるでしょ?」

 

が、しかし。その前に体育祭を前にして。明人はシャーロットを意識してしまい、二人の間にはどこかぎこちない空気が漂っていた。前巻の最後、シャーロットの告白にも似たその台詞に意識が止まらず。彰に譲られた二人三脚、そのパートナーとしての練習も距離を取ってしまう程に。二人の間は少しだけぎくしゃくしてしまったのである。

 

その意識は、今までとっていた明人の振る舞いを狂わすものとなっていく。周囲にも驚かれ、周りにも少しずつ気づき始める者達が増え始めるように。少しずつ二人の間に流れるものが判明し。二人三脚で仲の良さを見せつけたり、借り物競争で明人を指名したり。少しずつシャーロットのアプローチは積極性を増し。明人の心は揺れていく。

 

だがしかし、何故か明人は最後の一線を踏み越えようとはしない。それは何故か。その答えはエマが三人で出かけた時、明人に貰った宝物を貸してほしいというトラブルに見舞われた時の明人の態度から繋がり、宝物の修理のために級友である華凜の助力を仰いだ時に判明する。

 

それは、華凜と明人の間にあった意外な繋がり。ネコクロ先生の作品だしやはりあった、明人の闇の源流。今更告げられた誘いに明人は迷い、自分の心を表せず上の空となってしまう。

 

「本当に相手のことが好きなら、ちゃんと向き合わないとだめなんだよ」

 

どうすればいいのか、と悩むシャーロットに有紗は助言する。今、助けられるのは自分だけ。ならば誤魔化さずにきちんと向き合えと。

 

「幸せとはいったい誰が決めるのでしょうか?」

 

自分では幸せに出来ぬと、突き放そうとする明人。だがシャーロットは二人きりのデートの場、きちんと逃がさぬとばかりに向き合い、優しく告げる。自分の幸せはあなたの傍にある、だから怖がらなくていい。一緒に考えて、支えていきたいと。

 

今まで何もなかった自分。けれど今、大切なものは手を伸ばしてくれた。ならばもう心は決まっている。明人はシャーロットの手を取り、向き合うべきと向き合い答えを出すのである。

 

一つの結実を迎え、一つの大きな問題に決着をつける今巻。切なさの中から甘さと温かさが駆け抜けてくるのを見てみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について 3 (ダッシュエックス文庫) | ネコクロ, 緑川 葉 |本 | 通販 | Amazon