読書感想:一人暮らしを始めたら、姉の友人たちが家に泊まりに来るようになった2

 

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読書感想:一人暮らしを始めたら、姉の友人たちが家に泊まりに来るようになった1 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、朱音、奏、伊吹というタイプの違う年上美少女三人から溺愛される主人公、優斗であるが、彼が年上女性を惹きつける強み、というのは何であろうか。小動物のような庇護欲を誘う外見、だろうか。それもあるかもしれないが、それだけではないかもしれぬ。では他に何があるのか。それはきっと、誰かのために一生懸命になれる青臭い熱さなのであろう。

 

 

そんな熱さに、今巻は伊吹が魅了されていく、というのが今巻の趣旨なのである。

 

「何その死地に赴こうとする主と従者みたいな会話」

 

一人暮らしにも少しずつ慣れ始め、かと思いきや主に奏の溺愛が原因で甘やかされている事で自立にはまだまだ程遠い、優斗の一人暮らし。だが、バイト先では流石に甘やかされる事も少なく。徐々にバイトにも慣れ始める中、伊吹が衝撃の発言をかます

 

「私はバイトを始めることにした」

 

それは正に青天の霹靂、その理由は家賃が払えないと言う切実なもの。だが引っ越し業界でバイトをしてみれば、社会の闇の一端に触れてしまい。飲食店でバイトしてみれば、色々やらかしてしまい。まるで勤労と言う言葉自体が彼女を避けていくかのよう。

 

ではどうすればよいのか。朱音のふとした提案、それは伊吹の一芸特化を活かしてアイチューバ―、つまりは動画配信者になるという事。 早速全員で額を突き合わせて考え、意見を出し合い。まずはスマホでルーティーン動画を作成し投稿するも、やはり反応は芳しくなくて。それもまた仕方のない事かもしれない。彼等に欠けているのは何か。それは「参謀」。ブレーン役が不在なのである。

 

その役目に相応しき女子は、意外とすぐに現れる。撮影機材を借りる為に映研を訪ね、そこの部長である杏美が興味を示し、半ば強引に仲間に加わり。動画作りに携わる彼女の知恵を借り、方向性を見出して。まるで加速が止まらぬように伊吹のチャンネルは人気を増し、大手事務所からも声がかかるようになる。

 

所要により欠席した杏美を残し、話を聞いて。だが辞退を申し出た彼等の態度に思う所があった杏美は、一人離れていこうとする。

 

上を目指し続ける彼女の過去に何があったのか。それは顧問の先生が語る。それは作り上げた映画が、皮肉にも心を折ってしまったという事。一度味わったのならば離せない、禁断の果実の味を優斗達には知って欲しくないから。

 

「それに楽しみながらでも上を目指すことはできると思いますよ」

 

だけど、優斗は大事なものが分かっている伊吹を示して。自分達なら、杏美というプロデューサーもいればきっと大丈夫、そう安心させるように口にする。それは杏美が選べなかった選択肢。それが彼女の心を吹っ切らせるのだ。

 

更に甘やかしが加速する中、動画制作と言う新たな面白さが加わる今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。