読書感想:悪役御曹司の勘違い聖者生活 ~二度目の人生はやりたい放題したいだけなのに~

 

 さて、ラノベにおける主人公が悪役、という場合は周りから真逆の評価を得、寧ろ慕われるし崇拝されるというのが多いのは何故であろう。現在放送中のスーパー戦隊の、レッドのようなものだろうか。というのはともかく、実際の所は多分転生者、という要素が付随するからではないだろうか。そもそも本当に悪役にすると、物語として作りずらいという事もあるかもしれないが。

 

 

と、そんな前置きから分かっていただけたかと思うが、この作品の主人公、オウガ(表紙中央)もまた転生者である。異世界の悪徳領主として転生した彼は、前世では人の好さで割を食っていたからか、今生ではやりたい放題をする事を志し。この世界では必須である魔法に適性がないという診断を受けながらもめげず、持ってはいる膨大な魔力を生かした自分だけの魔術を開発し。早速やりたい放題をすべく動き出す。

 

「なら、あなたはまだやり直せる」

 

「だったら、俺のそばで、俺のために生きろ」

 

・・・が、しかし。やりたい放題をしようとしてみたら、積み上がっていくのは悪評ではなく、寧ろ好評の方であった。どうも彼にとっての悪としての振る舞いは、周囲から見れば聖者のように誇り高い立ち振る舞いであったらしい。あふれ出るその善性とカリスマ性が周囲の人間を惹きつけ。正義感故に追放された元騎士団長、クリス改めアリス(表紙右)と魔法学院の才能あふれる平民、マシロ(表紙左)を配下に収め。気が付けば彼の知らぬ間に、聖者としての道を歩き始めていたのである。

 

それもまた仕方のない事かもしれない。彼のやっている事というのは悪政というよりかは寧ろ世直しと言うべきである。普通の悪役は孤児院を襲う悪を退治したりはしないし、困っている誰かの願いを聞き届けたりもしない。

 

「でも、俺には通用しない。それだけが事実だ」

 

だが、彼はそれを為す。それが悪人としての所業であると信じ、心のままに生きていく。それが彼の評価を呼び、いつしか尾鰭がつくように、制御を越え加速していく。その中で彼は、幼馴染である公爵家の令嬢、カレンを望まぬ婚約から救い。気が付けば婚約者として認められていくのである。

 

「彼なら至れるかもしれぬとな」

 

それどころか、もっと先まで。彼は知らぬ間に国王からも注目を集め。いつの間にか国を継がせる者の後継者として、見込まれていくのだ。

 

自分にとってのやりたい放題をしていく中で気が付けば評価されていくこの作品。爽快感のある物語を楽しみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

悪役御曹司の勘違い聖者生活 ~二度目の人生はやりたい放題したいだけなのに~ (電撃文庫) | 木の芽, へりがる |本 | 通販 | Amazon