読書感想:反逆者として王国で処刑された隠れ最強騎士1 蘇った真の実力者は帝国ルートで英雄となる

 

 さて、別に語る訳でもないが、私は本日マーベルのとある映画を見てきたわけであるが、マルチバース、もしくは平行世界とでも言うべきか。様々な世界が存在し、誰かが取った選択肢の分だけ、その誰かは違う世界を生み出し存在しているらしい。と、言う事は私達読者のあそこでああすりゃ良かったニャ、という選択の別の選択をした自分もまた、いるかもしれないのである。

 

 

この作品の主人公であるアルディアという青年もまた、とある選択に関わる後悔があった。それも死の際にまで後悔するほどの。

 

レシュフェルト王国とヴァルカン帝国、異世界の二つの大国の戦争の中を、仲間達を次々と失いながらも生き延び。「魔王」という渾名で恐れられ、戦争を終わらせ英雄となった彼は戦争が終わった後は不要と言わんばかりに反逆罪で死を宣告される。処刑台で彼が最後に想っていた事。それは敵国の皇女であったヴァルトルーネ(表紙)を救えなかったという後悔。敵国の姫でありながら自分を求めてくれた彼女の味方として生きて見たかった、という思い。

 

「言っちゃ悪いが、センスの欠片もないぜ?」

 

「ずっと・・・・・・貴方に会いたかった」

 

 だがしかし、死んだ筈の彼の意識は六年前、中立都市の士官学校の卒業式に舞い戻っていた。目の前にいるのは死んだ筈の仲間達、そしてヴァルトルーネは再会の喜びを告げ、二人は再会を果たす。共に、非業の死を遂げた前世の記憶を携えて。

 

なれば為すべきことは一つ。今度こそは守る、全てを。戦争の結果を変える為に動かんとするヴァルトルーネにアルディアは忠誠を誓い。前世における彼の仲間達も、彼の言葉に何かを感じたのか、帝国への誘いに乗り。まずは全員を帝国側に引き抜くことに成功したのであった。

 

しかし引き抜いて終わり、ではない。そも、まず戦争を帝国側に勝利に持ち込む為にはやる事ばかり。まずは戦争を引き起こし、そして全ての懸念事項を取り除かねばならぬ。仲間達を新設の部隊として組織し、まずは王国側から人材の引き抜きを進めるべく、第四王子を懐柔し。更には帝国側の有能な人材を集め、内部の腐敗と汚職の断罪を始めていく。

 

「彼より強い人を私は見たことないもの」

 

その渦中をアルディアは駆け抜ける。ヴァルトルーネの専属騎士として、仲間と共に。まるで水を得た魚のように、魔王と恐れられた剣は真に仕えるべき主を見つけた。ならば魔王の為すべきことは一つ。主君の盾となりその身を守り、主君の剣となり阻むもの全てを切り伏せること。一度目の人生の、幾多の死線を潜り抜けた経験が圧倒的なアドバンテージとなり、前世の最強は再び目を覚ますのだ。

 

過去への転移と戦記が絡み合い、濃密なバトルが幾つも描かれるこの作品。心燃やすバトルを楽しんでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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