読書感想:世界で一番『可愛い』雨宮さん、二番目は俺。

 

 理樹、明久、心葉。この名前に心当たりのある読者様は是非に握手をしていただきたい。この三つの名前は今も尚語り継がれる名作の主人公の名前であるが、この二人に共通する要素、は皆様お分かりだろうか。答えを先にいってしまうのならば「女装の経験者」という点である。二次元の世界を紐解いてみれば、女装をしたことのある主人公というのは時折いるものだ。ではそんな主人公達に基本的に共通するであろう事項、とは何であろうか。

 

 

私が思う答えとなってしまうが、その答えは「女性に似た特徴」。例えば線が細かったり、体格が華奢であったり。男子としてはあまり一般的でないそういった要素こそが、女装には必要なのではないだろうか。

 

「やっべぇ・・・・・・超可愛くね? 俺」

 

女性向け大手ファンションブランド、「Candy in the Candy」。通称「アメアメ」。かのブランドには一人、世界一可愛いと全世界から言われるモデルがいる。その名は「hikari」(表紙)。そのプロフィールが一切謎なミステリアスな彼女の秘密を世界は知らない。彼女は実は男であり、従姉妹に巻き込まれた普通のモブキャラ、光輝であるという事を。

 

彼は巻き込まれながらも、自分の女装姿に自信を覚え。いつしかそれは絶対的なものとなり、自意識過剰とは言えないながらも自分以上に可愛い少女はいない、という自負を持っていた。

 

 だがそんなある日、彼は自分の人生観を変える運命的な出会いをする事となる。ひょんな事から学校で助けた地味な陰キャラ、雨宮さん。「hikari」の姿で街中で絡まれる彼女を助けた際、自分がその正体であると感づかれ。お礼にお出かけに誘われた際、彼女に原石の可能性を感じたからこそ「アメアメ」の本社で彼女をイメチェンさせてみた所、誰もが驚くような変化を彼女は遂げてしまったのだ。

 

「つまり世界で一番可愛いということになる!」

 

世界三大美女も嫉妬する、今まで一番だった自分が二番になる。けれどそれも当然と心が納得する。美に携わるからこそ嘘を付けない、嘘をつかない。だからこそ自分に自信を持って、と彼女の背を押す。

 

その様子を目撃した、廃部寸前の写真部の部員である雷架に被写体となって欲しいと依頼され。撮影に挑む中、彼女と友誼を結び、友達も増えていく。

 

「私は―――変わりたい」

 

 どんどん広がっていく彼女の世界、でもその根底にあるのは変わりたいと言う強い思い。何故変わりたいと願うのか、それは伝えたい思いがあって、隣に並びたい人がいるから。それ即ち「恋」。女の子は秘密を食べて美しくなり、恋という太陽が素養という花を咲かせる。決意の元に踏み出す一歩は、正しく大きな一歩となるのである。

 

世界で一番ステキな恋、なるほどこれは確かに素敵である。もどかしくもいじらしくそして真っ直ぐな恋があるからこそ、心をくすぐる面白さがあるのである、この作品は。

 

弾んで響くような恋が見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

世界で一番『可愛い』雨宮さん、二番目は俺。 (GCN文庫 ア 01-01) | 編乃肌, 桑島黎音 |本 | 通販 | Amazon