読書感想:星美くんのプロデュース vol.1 陰キャでも可愛くなれますか?

 

 さて、アニメやラノベの世界には「性別:○○(個人名)」という言葉があるが、この○○に入る言葉を画面の前の読者の皆様は何と連想されるであろうか。私個人としてはファミ通文庫の金字塔を築いた某作品のキャラを当てはめたい次第であるが。というのはともかく、女装というのは実はアニメやラノベにおいては時折みかける要素である、というのは画面の前の読者の皆様もご存じであろう。

 

 

この作品はつまり、そういう作品なのである。「性別:星美くん」とでもつけたくなるような主人公が、少女達を可愛くプロデュースしていく中で始まるラブコメなのである。

 

とある高校に、ひっそりと流れる噂。化粧品に悩む女子の元に現れ声を掛け、アドバイスをくれると言う謎の存在しない生徒。その正体こそが、この作品の主人公である次郎。とある事情から女装を好むも日常においては隠している、卒業生である姉から入手した制服を用いてアドバイスに励む彼。だが、ある日。突発的なアクシデントから級友である陰キャの四夜(表紙)にその秘密が露呈してしまうのであった。

 

「秘密を守る代わりに、わたしを星美くんみたいに可愛くしてください!」

 

秘密をばらされるかと怯えるも、陰キャ故にそもそも明かす相手もおらず。だが自爆覚悟である意味で彼を脅迫してきたため、やむを得ず次郎は四夜を可愛くプロデュースする事となる。

 

そも、表紙から分かる通りに彼女は素材としては悪くないどころか特上の存在である。ならばやるべきことは、まず根本的な改造、という訳でもない。必要なのは、その魅力の原石を磨き引き出していく事。まずはメイクの基本から始まり、髪を整え、更には服も整えて。彼の手により、彼女の魅力はあっという間に引き出されていく。

 

そんな中、次郎は四夜の過去、陰キャになった原因に触れていく。同時に四夜も次郎の、今のパーソナリティが形成されるきっかけとなった事に触れ、彼の心の深い部分に触れ。少しずつ、ある意味図々しいともいえる素の部分をぶつけるようになり、次郎もまた四夜に影響を受け、変わっていく。

 

変わっていくからこそぶつかり合う事もある、意見が合わない時もある。そんな中で、次郎は身近にいた四夜が陰キャになる原因となった人物との、決着の舞台を演出する事となる。

 

「―――だから、ボクが可愛いと思う心寧を、心寧が否定しないであげて」

 

大切なのは、自分自身を認める事。こうあってもいいのだ、と許してあげる事。次郎に背を押され、四夜は因縁と向き合い。そこに隠されていた優しさを知って、仲直りの一歩を踏み出していく。

 

一つの関係は結ばれ、しかし新たな関係は始まる。故にここからが本当の始まりなのだ。

 

カワイイと純粋で繊細な思いに溢れたこの作品。心を打つ面白さがあるので、心に新しい風を吹き込みたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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