読書感想:天使な幼なじみたちと過ごす10000日の花嫁デイズ

 

 さて、10000日とは一体どのくらいの年月であろうか。ざっと計算してみると約二十七年、一人の人間が生まれて、中年と呼ばれる年代に差し掛かるくらいの年月である。それだけの時間があれば、普通のラブコメであれば大体出会いから交際、結婚までいきついている事が多いと言える。つまりはこの作品は、そんな作品という訳である。

 

 

「ありがとう・・・・・・私を選んでくれて」

 

ごく普通の少年、啓介。彼の人生の10000日目。彼は幼馴染との結婚式を上げようとしていた。紆余曲折、艱難辛苦を乗り越えて新しい人生の門出をあげようとしていた。

 

「だってほら、見てみなって。今日も天使じゃないか?」

 

だがそこに至るまでの光景が語られぬ訳ではない。場面が変わり描かれるのは、高校入学の日。幼いころに隣に引っ越してきて、ひょんな事から子供心に結婚の約束を交わした幼馴染、花織(表紙)と勿論通う学校が違うから別れた所から。

 

 ここから描かれるのは、幼馴染たちと過ごしていく人生のそれぞれの年代を切り取った日々。いずれも何物にも代えがたき、輝くような時間。だが幼馴染は花織だけではない。幼稚園から就職先まで一緒な幼なじみの舞花、とある切っ掛けから家出した時に助けてくれたぽんこつお姉さん、和花菜。三人の幼なじみとの日々が始まっていくのである。

 

花織に高校入学の日に高校まで押しかけられた数年後、彼女が飲み会の日に颯爽と現れてお持ち帰りしたり。

 

気の置けない関係である幼馴染の舞花に頼まれ、しつこいストーカーを諦めさせるために恋人同士のフリをしたり。

 

関わるにつれてぽんこつな一面が見えてくる、和花菜のお世話をする事になったり。

 

―――幼馴染の数だけ日々の形があり、そしてそれぞれと育む恋の形がある。ここまでであれば、甘々のラブコメと言えるだろう。だがそれだけではない。後半、結婚式の前の時間の中で衝撃的な発言が花嫁から飛び出してくる。

 

「あなたのことを愛しているっていう気持ちを」

 

それは、ヒロインレースに決着がついたと言う事。それと同時に、三人の内の誰かに何かが起きたのかもしれないと予感させてくるもの。それは一体どういう意味なのか。前向きな発言であれば、彼女の勝利と言えるかもしれない。だがもしその通りの意味であるのなら。それは彼女の文字通りのヒロインレースからの脱落を示すものなのかもしれぬ。

 

「だれか一人なんて選べないよ・・・・・・!」

 

その答えはまだ見えてこない。しかし10000日の半分ほどの時、ヒロインレースは幕を開けた事は確かである。つまりは結果は何れ示されるという事だ。

 

ちょっと不穏な感もあるけれど、可愛い幼馴染との甘々なラブコメが楽しめる今作品。王道なラブコメを読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

天使な幼なじみたちと過ごす10000日の花嫁デイズ (電撃文庫) | 五十嵐 雄策, たん旦 |本 | 通販 | Amazon