読書感想:ゲーム・オブ・ヴァンパイア

 

 さて、吸血鬼というジャンルがあるが吸血鬼、と言えばどんな存在を画面の前の読者の皆様は思い浮かべられるであろうか。日の光に弱い、銀に弱い、様々な例があれど、吸血鬼と言うと不老不死、または超長命、というパターンが多いであろう。また別のパターンとして、吸血鬼というのは魅了の力で自身が吸う血液を持つ相手を確保している、というパターンもあるであろう。ではこの作品は一体どういう作品なのかであると。吸血鬼、という存在が存分に絡んでくるお話であり、その戯れに子供達が巻き込まれていくお話なのである。

 

 

「愛はありますか」

 

吸血鬼が人を襲い、それが災害として認識されているとある世界。始祖と呼ばれる強大な吸血鬼に家族を皆殺しにされ、「鮮血の契り」という儀式により妹を新たな肉体として使われ。その果てに気紛れにより血を授けられ、半吸血鬼として生き延びた少年、命(表紙中央上)。全ての吸血鬼を殺したいと言う願いのままに、公安吸血鬼災害課という所で日夜吸血鬼と戦う彼は、上層部からの指示により同居人の真子(表紙中央上左)と共に私立天霧学園という学び舎に潜入する事となる。

 

 そこに潜んでいるのは吸血鬼、しかも妹の仇である始祖の可能性アリ。「特別クラス」と呼ばれる特待生たちを「支配クラス」と呼ばれる一般生徒達が目に見える差別が容認されている学園。見つける鍵となるのは、命が身に着けた魅了の力。その力への反応を切っ掛けに、候補者は四人にまで絞られる。

 

才色兼備な優等生、ミライ(表紙下左)、謎の多い気分屋、アサ(表紙下右)、猛獣のような凶暴さを持つユメ(表紙中央左)、内気な天才ピアニストのヒカリ(表紙中央右)。

 

ミライからは邪険にされ、ヒカリを虐げるユメからは睨まれ。それぞれの反応を返される中、ミライへのストーカー事件に迫る事を求められ、それを切っ掛けとし、四人と仲良くなることに成功し。だが、そのストーカーの突然の惨殺事件をきっかけに、事態は急展開を迎える。

 

「おまえは、だれだ?」

 

 数々の欠片を繋ぎ合わせ真実へと迫り。見えてきたのは、二人の少女の隠された思い。幼いころからの繋がりがあった二人の、お互いの為なら自分を犠牲に出来ると言う強い絆の繋がり。それを踏み躙るのは、始祖の存在。ずっと命たちの傍に潜んで邪悪に笑っていた黒幕の嘲笑は全てを明らかにし。決戦は即座に幕を開ける。

 

力の限りを尽くしぶつかり合い、だが圧倒的な力に膝をつかされ。絶体絶命の状況を覆すのは何か。それは「愛」の力。長き時を生きる始祖では分からず、愛に臆病な命では知らぬ。そんな力が予想外の動きを生み出し、命の一撃が届く力となる。

 

だが、これは終わりではない。捕縛されようとも脱出した始祖は笑う、まだまだ終わりではないと言うように。

 

重くて鮮烈な愛があって、ダークなサスペンスでもあるこの作品。心を重くしたい読者様は是非に。きっと貴方も満足できるはずである。

 

ゲーム・オブ・ヴァンパイア (電撃文庫) | 岩田 洋季, 8イチビ8 |本 | 通販 | Amazon