さて、画面の前の読者の皆様は「家族もの」のラノベと聞いて何を連想されるであろうか。早逝したかの有名な作家様の作品を思い浮かべられる読者様はどれだけおられるであろうか。という話はさておき、家族ものとは独特の温かさに満ちている作品であるが、それだけではいられない。ではそこにこの作品は何を絡ませていくのか。さっそく見ていきたいと思う。
とある市の市役所に努める青年、快斗。日々の仕事に対する姿勢は真面目、特にさしたる特徴があるわけでもない社会人。彼の元にある日舞い込んできたのはほぼ交流もなく、血のつながりもない親戚の訃報。想式に出席する事を親戚連中から求められやむを得ず出席した葬儀の場で、彼は残された遺族である四姉妹と出逢う。
「・・・・・・俺が引き取ります」
葬儀の場で、頭の片隅にチリチリとこびりつく、言い知れぬ頭痛。その頭痛が突如としてこの世界の真実を告げてくる。それは、この世界は「響け恋心」という百合ゲーの世界であり、この四姉妹はシナリオでも毒親により虐げられしかもこのままでは更に不幸な目に遭うという事。その事実を思い出し、彼に押し付けようとするクソみたいな親戚たちの思惑に敢えて乗り。彼は彼女達を父親として引き取ることを決める。
彼女達は人とは少し違う、不思議な力を持つ子供達であり。その特別さから周囲から迫害を受け。そういった経歴故に、姉妹達はお互いしか信じられるものが無く。故に彼女達は閉じた世界の中に、閉じこもっていた。
「引き取りたいと言ったのは俺だから、俺からは投げだしたりしない。約束する」
そんな彼女達に快斗は、「父親」として向き合う。彼女達が抱える事情と、四姉妹それぞれが抱えるコンプレックスに向き合っていく。
中二的な発言をするもその内面に、気遣いを隠す三女、千秋(表紙右)の趣味に合わせる形で話のテンポを掴み。姉妹以外を信用していない次女の千夏の心に寄り添い、優しくその心を解きほぐし。 姉妹の長女として、彼の事を見極めようとしていた長女の千春(表紙左)の心を揺らし、その胸に信頼感を抱かせていく。
時に日々の生活の中で、何気なく彼女達の問題に向き合い、姉妹それぞれが抱えるコンプレックスに大人としてアドバイスを届け。姉妹からの晩御飯のリクエストに応えたり、四姉妹にはじめてのクリスマスを体験させたり。
「二人からしたら大したことじゃなくても俺からしたら大したことなんだ」
何気ない幸せ、それは心を溶かす熱。毎日が楽しくて嬉しい、そんな当たり前が何よりも愛おしい。少しずつ歩み寄り、家族になっていく。一つの塊になっていくのである。
家族モノの温かさを味わってみたい読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
百合ゲー世界なのに男の俺がヒロイン姉妹を幸せにしてしまうまで 1 (オーバーラップ文庫) | 流石ユユシタ, すいみゃ |本 | 通販 | Amazon