さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様に一つお聞きしてみよう。貴方は「女子寮」という言葉を聞いて、どんな事を連想されるであろうか。サブカル系で言えばどんな作品を連想されるであろうか。・・・え、私? 私が連想するのは、keyの名作のスピンオフである、某作品である(分かる人には分かるかもしれない答え)。
と、いう四方山話はさておき女子寮と言うのは基本的に女子の花園、秘密の庭という空気感があるかもしれない。基本的に男子は立ち入り禁止の、男子からすれば縁遠い空間と言っても過言ではないかもしれない。
そんな秘密の庭を舞台にしたのがこの作品であり、その小さな世界で繰り広げられるラブコメ、というのが今作品なのである。
今まで勤めていた企業を退職し、充電期間といった感じの青年、蒼太。彼はある日、突然のアクシデントに見舞われてしまった祖母の代わりに、祖母が管理する女子寮の管理人として就任する事になってしまう。
彼を待っていたのは、個性的に過ぎる年齢も境遇もバラバラな四人の女性。元気印の高校生、ひより(表紙中央)、中学生サイズの大人の琴葉(表紙左端)、まとめ役だが酒乱の気がある小雪(表紙左端から二人目)、ひよりの親友で男嫌いな美麗(表紙右端)である。
男嫌いな美麗に敵意を向けられ、ひよりには懐かれ歓迎され、残る二人にはおおむね歓迎され。波乱の中で始まる、蒼太の管理人生活。
当たり前の時間を共に過ごし、時に二人きりとなったりしながらも。すこしずつ時間を重ねていく。
そんな中、ひよりと二人で買い物していたところを彼女の級友に目撃された事を切っ掛けに。蒼太はひよりの抱える悩み、彼女が抱える問題へと直面し向き合う事になっていく。
いつも元気印な明るい彼女、けれど彼女は誰にも頼れず。一人抱え込むしかなく、誰にも頼れぬままに倒れるまで突っ走ってしまう彼女。
「管理人が学校生活について触れるのはお門違いだし、度が過ぎてるのはわかってるんだけど、そこに体調を崩す原因があるなら一緒に解決していきたいから」
放ってはおけぬ、たとえ職分を逸脱するとしても。それでも、管理人として。一人の人間として。放ってはおきたくないから。
「だからさ、ひよりを傷つけるような相手の言葉を信じるより、俺の言葉を信じてよ」
無理に迫るのではなく寄り添って、解きほぐして。柔らかく、優しく包んで。ひよりの秘密を受け止め、彼女を無条件に肯定して。見てきた時間は短いけれど、それでも必死に向き合う蒼太。
そんな彼だからこそ、許せる心があるのかもしれない。
蒼太の過去も絡む恋愛模様が繰り広げられる、温かく甘い独特の面白さが溢れていて。まるで口の中で蕩けるかのように。だからこそ、この作品は面白いと言いたい。
温かくて甘いラブコメが好きな読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
女子寮の管理人をすることになった俺、住んでる女子のレベルがとにかく高すぎる件。こんなの馴染めるわけがない。 (ファンタジア文庫) | 夏乃実, 鏡乃 もちこ |本 | 通販 | Amazon