読書感想:みんなのアイドルが俺にガチ恋するわけがない2



前巻感想はこちら↓

読書感想:みんなのアイドルが俺にガチ恋するわけがない - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻を読まれた読者様は夜に虹がかかる島、夜虹島ともう一人の自分ともいえる「レプリカ」という現象についてはもう事前知識はおありであろう。前巻、久良羽にとって必要であったのは「本音と向き合い、受け入れること」であった。では今巻の表紙も務める久良羽のかつての仲間、蘭(表紙)にとっては何が必要となるのか。その答えを先に言ってしまうのならば「本音からの解放」である。

 

 

解放とはどういうことか。一体蘭は何に囚われているのか? その事に迫りながら、主人公である継陽の過去にも迫っていくのが今巻なのである。

 

「いいの? 現役アイドルを口説く絶好のチャンスだよ?」

 

写真集の撮影と言う事で夜虹島へと蘭がやってきた事で、にわかに島は大騒ぎとなり。そんな中、プロとしてきっちりと仕事に励む蘭は久良羽と旧交を温めるかのように触れあったかと思えば、何故か継陽へともぐいぐいと来る。彼相手であればこうすればよい、と知っていると言わんばかりに。

 

 にぶにぶな彼でもやはりドキリとはするもの。だがしかし、そこへ蘭のレプリカが現れ、何処かお通夜のような顔でマネージャーである塔子に怪我を負わせ。彼女の代役として継陽は一日だけのマネージャーとなる事となる。

 

蘭の側でいざという時は盾となる覚悟を固める中、再び姿を現す蘭のレプリカ。だが、その在り方は前例である久良羽のレプリカ、クラウとは異なるものだった。なぜか意思疎通も出来ず、それどころか蘭自身に興味も示さず。なぜか蘭のレプリカは継陽へと狙いを定め、レプリカを始末しようとした彼方も後れを取ってしまい、力の源であるストールを奪われてしまう。

 

「アイドルって残酷な仕事だね」

 

 蘭のレプリカは一体、何をしたいのか。その行動の根底、そこに込められていたのは過去への固執。天才である久良羽に焦がれ共に輝いていたからこそ、あの日に拘り続けた。きちんと見送りたかった、それも出来ず。その後悔がレプリカを呼んでしまったのだ。

 

「蘭、もう自分を許してやれ。君を待つ大勢のファンのために。その中には久良羽だって含まれているんだ」

 

だが、天才もまた普通に憧れていた。そして過去の継陽が初めての恋をしたのも、そんな普通の輝きを持つ彼女だったのだから。だからこそ、彼女の涙は見たくない。決着をつける為に、蘭を連れて彼方と共に駆け出していく継陽。

 

「ファンの熱い声援には応えないと。喜んでアンコールをしちゃうよ!」

 

 ただのアイドルオタクだけれど、それでも考え続けてきたからこそ分かる。彼女が求めるものを叶えるには誰が必要か。それは「彼女」の協力。たった四人しか観客のいない幻の引退ライブ。それは一夜限りのこの島だからこその奇跡。

 

継陽の成長と人間関係が広がる中、恋が更に動き出し。物語としての段階が確かに上がる今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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