読書感想:ドラキュラやきん!5

 

 さて、一応おさらいをしておく次第であるが、この作品においては元人間の吸血鬼が人間に戻る方法、というのは一応存在はしている。しかしそれは虎木にとっては困難に過ぎる道程であるというのは皆様ももうご存じであろう。敵である愛花は生粋の吸血鬼、対する虎木は人間でありたいが故に吸血鬼の生き方をしない吸血鬼。力の差は歴然であるのに、弟である和楽の寿命という制限時間がある以上時間はない。だからこそ、もう虎木は立ち止まることをもう出来ない。受動的ではなく能動的に動き出すしかないのだ。

 

 

だとしても生き方を変えられぬ。忌避する吸血鬼の生き方、そうはならぬ為に虎木はザックに修行をお願いし。一見すると修行にも思えぬような修行をつけられ、自身に秘められた「血」の力を強化する道を探していく。

 

「そうね、宣戦布告をしないのは、礼儀に反するわね」

 

その彼への好意を隠さなくなったアイリスは、未晴に対し宣戦布告をぶちかましキャットファイトが始まると共に、人間関係が多様性を増していく。

 

 そんな中、彼等の元に一つの噂が届く。それは「デイウォーカー」、日中でも活動できると言う吸血鬼の弱点を克服した者。眉唾物な噂に首をかしげる中、闇十字による強制健康診断の帰りに、謎の吸血鬼である鉈志に襲われる少女、理沙を助け。ここより今巻の新たな騒動が始まっていくのである。

 

夜間学童に預けられている理沙と関わり合う中、警察の不手際で逃がしてしまった鉈志が理沙を人質に取り虎木を狙い。その脅威を機転と知恵で乗り越えた先、甥っ子から和楽に癌が見つかったという知らせを受け。「相続」という現実的な問題を話し合うために、五十年ぶりに故郷を訪ねる事となる。

 

「何でただの人間のはずの修道騎士があんなに強いか」

 

 が、しかし。郷愁の気持ちも長くは続かなかった。突如として舞い込んだ闇十字の支部が「デイウォーカー」達に占拠されたと言う知らせを受け慌てて東京に舞い戻り。呼び出され単独で赴いた虎木の目の前、磔刑に処された修道騎士達を前に黒幕は衝撃的な真実を投げかける。

 

それは一部の修道騎士は、ファントムもびっくりな秘密を抱えていると言う事。禁忌の方法で生まれる「デイウォーカー」、その真逆でありながら酷似した方法で生み出された存在であると言う事。

 

彼等の目的、それは吸血鬼を恨む者としては当たり前。

 

「俺は家族と仲間に顔向けできねぇ」

 

 だが、「人間」として生きたいと願う虎木にとっては相容れぬもの。だからこそ許せぬ、だから戦う。未晴やアイリスが愛してくれた人間として生きたいと言う吸血鬼の弱さで。

 

だが、同時に突き付けられる。自分の正義にどれだけ力がないのかを。だからこそもっと強くならねばならぬ。その為には「血」の力から逃げてはいけないのだ。

 

「人間」という枠組みを問う中、状況が少しずつ加速する今巻。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

ドラキュラやきん!5 (電撃文庫) | 和ヶ原 聡司, 有坂 あこ |本 | 通販 | Amazon