読書感想:友達の後ろで君とこっそり手を繋ぐ。誰にも言えない恋をする。2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:友達の後ろで君とこっそり手を繋ぐ。誰にも言えない恋をする。 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、友情か、恋か。ままならぬ感情に揺れる等身大な彼等は、全部を得ようとして強欲にもその手で全てを囲い込もうとする。全部包み込めるとひたむきに信じて。前巻を読まれた読者様は胃が痛くなられた事であろう。夜瑠の思いがどれほど鮮烈であられるか、もう理解されているであろう。では一度目覚めた思いはどうなるのか。それは勿論答えは一つ。止まれないし止められないのである。

 

 

「やっぱりあんた、私の妹だわ」

 

折しも季節は文化祭が迫り出す中、仲良し五人グループはそれぞれの立場に別れ動き出すことになり。その中、夜瑠はひょんな事から学園祭でバンドをする事になり。純也へと向けて届けたい曲があるから、と練習に励む。姉にも指摘された、自分とよく似た鮮烈な恋の炎が導くままに。

 

「男女の間に一度でも恋愛が絡んじまったら、もう前みたいな友達関係に戻るなんてまず無理だよ」

 

だが、その炎を向けられた相手である純也の心は、別の風によって揺らされていた。かつての親友であった和道からの突然の連絡、そこで知らされたグループ崩壊の原因となった恋の破局の事実。その事実が、まるで自分もいつかこうなるかもと言っているようで。恋を選ぼうとする中、友情もまた取りたいと思った彼の心に焼け跡が如き跡を残していく。

 

「あたし、古賀くんのことがすき」

 

 そんな中、純也には秘密で四人だけ集まった場で、火乃子は突然宣言する。純也の事が好きだと、年内には告白したいと。新たな恋の炎が燃え上がる、それは夜瑠のような歪んだ形ではなく、真っ直ぐに。清濁許容した業火として燃え盛る。

 

その恋の前に口をつぐんでしまい、更には本番のステージで純也とすれ違ってしまい。失意に揺れる夜瑠は恋ではなく友情を選ぼうとし、自分にアプローチをかけてきた大人のミュージシャン、エルシドの手を取ろうとする。

 

だが、そこに純也は駆けつけてしまう。彼のその姿が、夜瑠に否応なく思いを再び自覚させる。ドロドロでぐちゃぐちゃな恋の炎、もう彼しかいないと言う真っ直ぐすぎる歪な思いが止められなくなる。

 

「だったら『黙ってたらいい』んだよッッ!」

 

 その思いへと、純也は一つの選択肢を投げる。否、それは投げかけてしまったと言うべきなのだろう。歪な友情の輪の裏、二人きりで全てを騙すというその選択肢を。更なる深みに嵌り戻れなくなる中、その底を超えて果てまで二人で堕ちていくような選択肢を。

 

それを選ばぬ夜瑠ではなく、ここに一つの秘密の関係が締結させる。彼は気づいているのだろうか。自分がやっている事は過去の焼き直しだと。見えているのだろうか。友情の関係の裏に隠されたそれぞれが抱える秘密を。

 

それは未だ分からぬけれど。この作品の面白さは確かに深化を始めているのだ。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

友達の後ろで君とこっそり手を繋ぐ。誰にも言えない恋をする。2 (電撃文庫) | 真代屋 秀晃, みすみ |本 | 通販 | Amazon