読書感想:竜王に拾われて魔法を極めた少年、追放を言い渡した家族の前でうっかり無双してしまう ~兄上たちが僕の仲間を攻撃するなら、徹底的にやり返します~

 

 さて、「うっかり」というのは自分の意思にかかわらず、やってしまう事である。社会に出てからのうっかりミス、というのは怒られる原因にもなり得るので、教えられた事はきちんと覚えておかねばならない。と、言う前置きはさておき、この世の中には「井の中の蛙大海を知らず」という言葉がある。だがもし、その蛙が大海全てを飲み干す程の力を持っているとしたら? 寧ろ大海の方が狭いとしたら、どうなるのであろうか。

 

 

そんな前置きから分かっていただけたかと思うが、この作品はタイトルが表す通りつまりはそういう作品なのである。簡単に言うと、王道の無双が繰り広げられる作品なのである。

 

とある異世界に存在する、竜に平和を乱されるハイランド王国。その中で竜殺しとして名を馳せる貴族の名家、ヴァルム家。その家の一員である少年、カル(表紙中央)は類まれなる魔力を持つも、聖竜王にかけられた呪いにより、魔法詠唱が行えぬというハンデを持ち。それを克服するために、独学で失われた無詠唱魔法を身に着けるも。とうとう家から見捨てられ、狂暴な竜が巣食う無人島へと追放されてしまった。

 

「安心せい! わらわがおるぞ」

 

その島で出会ったのは、古代遺跡に住んでいた、聖竜王から呪いをかけられた冥竜王のアルティナ(表紙右)。地竜に襲われていた彼女を助け保護され、事情を話し。アルティナはカルを保護する事に決め、カルはアルティナから竜の魔法を教わる事となる。

 

 そう、竜の魔法である。人間には決して扱えぬ言語の魔法、しかし無詠唱の使い手であれば関係なし。後は魔力の問題のみ。修行に励み知見を得る中、カルは様々な出会いと戦いを経験していく。

 

無人島に住んでいた猫人族の村、そこを襲う雷の古龍と兄であるレオンが率いる竜騎士の軍勢を同時に相手取り、その場で覚えた竜魔法で仕留めた事で、猫人族の者達の畏敬を集め。カルにかつて命を助けられた王女、システィーナ(表紙左)により新たな爵位と領地として無人島を貰い、実家からの離反者も加え本格的に領地経営を始め。

 

 

自らを慕う猫人族の少女、ミーナ達に無詠唱魔法を教え、彼女達を攫わんと襲い掛かってきたハンター達とレオンを纏めて撃退し。彼らが乗ってきた漁船で漁業を始めれば、海底王国からやってきた人魚族の王女、ティルテュを保護し。彼女の願いに応じ、海竜の長を倒すために外界へと飛び出し、そこに異母妹であるシーダも参加して。

 

気が付けば、カルの重要さに気付かずどんどんと没落していく実家とは対照的に。カルの周りには仲間達の輪が形成され、彼を慕う少女達が集まり。彼の実力は高まっていくと共に、新たな竜殺しとしてその名は広まっていく。

 

「うん、よろしく」

 

だがどれだけ偉くなろうとも、初心忘るべからず。大切な人達とこの日々を守る為。カルは突き進んでいくのである。

 

王道の無双が心に安心感と、真っ直ぐな面白さを齎してくれるこの作品。真っ直ぐに面白い作品が読みたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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