読書感想:豚のレバーは加熱しろ(6回目)

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:豚のレバーは加熱しろ(5回目) - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で今、豚がいる世界と元の現実世界は融合を始め、舞台そのものに暗雲が立ち込め始めた訳であるが、それでも豚に何かできる、という訳でもない。それも当たり前であろう。当たり前のことだが豚は只の豚であり、戦闘力の欠片もない無力な存在であるのだから。そんな彼の目の前で、世界の不穏は未だ終わらない、というのが今巻の趣旨なのである。

 

 

「最近、どうもね、とっても嫌な予感がするのよ」

 

前巻で王都の奪還に成功し、シュラヴィスを王として新たな政権は樹立され。だが生まれたばかりの政権は、生まれて早々に難しい舵取りを強いられていた。深世界との融合現象が巻き起こす混乱、崩壊寸前まで追い込まれた王朝の復興。そして同盟を結んでいた解放軍の願いである全てのイェスマの解放。それぞれの願いはぶつかり合うも、特にイェスマの解放はその後に起こり得る混乱と解放のための手段の喪失という点から、困難を極めていた。

 

 その対応として浮上したのは、全ての首輪を破壊できる「最初の首輪」。誰でも知っている「くさりのうた」という童謡にヒントを求め、国の中で捜索が始まる。だがそんな中、聖堂の中で北部勢力の残党を被害者とする大量殺人事件が巻き起こる。ジェスと豚が気付いた事、それは現場状況が「くさりのうた」を模していると言う事だった。

 

言うなればこれは「見立て殺人」。事件現場に残る神像が握る鎖の先に待つのは第二のヒント。ノットやシュラヴィス達と共に「十字の処刑人」と呼称された殺人犯を追い急ぐも、まるで王家への挑戦と言わんばかりに事件は巻き起こり犠牲者は増え。姿の見えぬ犯人の後塵を常に排し、追いかけた先で「最初の首輪」は失われたと言う血文字が彼等を出迎える。

 

 

「それはおかしくないか?」

 

 だが、豚の前に示された些細なヒントが事件をひっくり返す。時代的に整合が取れぬ、つまり何も終わっていない。では自分達は何を見逃した? それは謎解きの間と間、真逆の方向に合った真実。何故気付かなかった? それは「十字の処刑人」に思考を誘導されていたから。

 

もうお分かりであろう。ミステリーの十八番、どんでん返しだ。全ての事実はひっくり返り、本当の事実は示される。暗黒時代の負の遺産に隠れた思いが示される。

 

「辿り着いてしまったか」

 

真犯人はそれをも利用し、覆い隠そうとした。だがもう一人の犯人の献身により最初の首輪は起動し、解放は為され。その果てに訪れるのは決別だ。

 

世界の融合が進む中、更にシリアスになっていく今巻。

 

シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

豚のレバーは加熱しろ(6回目) (電撃文庫) | 逆井 卓馬, 遠坂 あさぎ |本 | 通販 | Amazon