読書感想:魔女に首輪は付けられない

 

 さて、首輪と書いてチョーカーとも呼んだりする訳であるが、ファッションとして首輪を使いこなすファッション、と言えばどんな方向性になるのだろうか。個人的な偏見込みでの私見だと、地雷系とかパンク系な人が点けているイメージがあるのだが。さてこの作品において首輪をつけているのは「魔女」と呼ばれる者達である。では何故つけているのだろうか。

 

 

かつて貴族が独占していた「魔術」は、近代化の流れと共に民衆にも広められる事になり。便利な技術として受け入れられるも、しかし悪用は避けきれず。「二大貴族」と呼ばれる貴族が統治するラス・リルテ皇国は犯罪者のるつぼと呼ばれるようになり。事態を重く見た「二大貴族」の片割れ、ドラケニア家により全員が魔術のエキスパートである「魔術犯罪捜査局」が組織され。設立五年以降は年間犯罪率も減少傾向にあった。

 

「恐れる必要などないよ、同じ人間なのだから」

 

そんな組織の一員であり、「血塗れのローグ」という異名で恐れられる捜査官、ローグ。現場から離れて管理側への昇進を控えた中、局長であるヴェラドンナから示された選択肢は左遷的な場所か、それとも存在しない場所か。存在しない場所を選ぶしかなく、配属されたのは公には存在しない部署、「第六分署」。そこは魔術そのものと融合し、不老となった化け物達、「魔女」を囚人として捕らえ戦力として運用する場所。かの場所で待っていたのは、「人形鬼」ミゼリア(表紙)、「不眠獣」、フマフ、「聖女」カトリーヌ、「仕事人」、アンジェネといった幾多の魔女たち。 捜査への協力は立候補制であるため、ミゼリアしか相棒にならず。一先ず彼女を相方としつつ、ローグは転移魔法陣と年齢を操る魔法が絡んでると思しき、謎の連続殺人事件の調査へと向かう。

 

「やはり拷問が一番手っ取り早く済むんじゃないかい?」

 

しかし、相棒としてミゼリアはとても扱いにくいタイプであった。そもそも同じ人間、であるはずであるが魔女である、精神構造が全く違う、それこそ化け物のような相手である。容疑者を人間とも思わず、さっさと済ませようと拷問しようとするし、味方であるはずの魔女すらもからかい煙に巻いて、チームワークをかき乱す。そんな彼女に振り回され怒りをこらえつつも、捜査を進める中で。犯人の罠に嵌められたカトリーナを身を挺して助けた事で、魔女たちの中でローグへの注目が高まっていく。

 

「これまで通り、右往左往しながら面白い姿を私に見せるということさ。よろしく頼むよ」

 

長き時を生きてきたからか、求めるのは楽しみ。魔女と言う存在を恐れる者は多けれど、まっすぐに反骨しぶつかってくるのは珍しい。彼の姿に面白さを感じ、本当の意味での協力を申し出。魔女たちの力により真犯人、この国で決して手を出してはいけぬ相手が判明し、あっさりと逮捕する事には成功する。

 

だが、そこからが波乱、落とし穴。予言されるローグの死、牙を剥くのは傍らの魔女。善人の皮を被った化け物の本性を現し裏切り、危機へと陥り。救援にやってきたミゼリアと協同し、今度こそと決着を付けに行く。

 

 

「俺は魔女だろうが何だろうが使い倒すって決めたんだよ」

 

その先に見つける、魔女と関わる彼だからこその心情。使い倒す、魔女でさえもと言う決意。

 

癖の強すぎる味方に振り回されながら戦いの場を突き抜けていく、心熱くさせるファンタジーアクションが山盛りなこの作品。ファンタジーで心を燃やしたい方は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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