読書感想:大学入学時から噂されていた美少女三姉妹、生き別れていた義妹だった。

 

 さて、時に画面の前の読者の皆様は、義妹系ヒロインと聞いて誰を連想するであろうか。 朝倉、という名字のキャラを連想した私は、割と物凄く古のオタクである気がするのだが。という話題はともかく。義妹と言うのは、家族的な関係であり。家族と言う近しい関係から恋に関係していく甘さ、というのが特筆すべき面白さであるのかもしれない。

 

 

そういう意味ではこの作品、ちょっと珍しいかもしれない。何故ならタイトルにもある通り、生き別れであるから。一度家族としての絆が途切れたから、そこから家族かそれとも恋人か。どう分化していくのかより分からなくなっているのである。

 

「もう十五年くらいはあってないかなぁ」

 

父子家庭育ちの平凡な大学生、遊斗。彼には一時期だけ、義妹がいた。それはどういう事か。一切の頃に実母が病没、その後父親が再婚し、連れ子だった三姉妹が義妹になったけれど、結局その結婚生活も一年半ほど、彼が六歳くらいの頃に終わりを迎え。六歳の子供がそれより年下の子といつでも連絡できる手段を持っている訳もなく。結果的に音信不通のまま、離れ離れになってしまったのだ。

 

だけど、今でも覚えてはいた。そんなある日、父親から齎されたのはその義妹たちが、偶々同じ大学に全員入学した、という事。生活のサポートをお願いされた彼は、一先ず出会いの機会を設けることになる。

 

「今日ね、大学ですごく優しい男の人に会った」

 

「・・・・・・えっ、心々乃も!?」

 

「え? 真白お姉ちゃんも?」

 

「あたしもカフェで、丁寧なお兄さんに会ったんだけど」

 

・・・・・・が、しかし。遊斗はまだ気づいていなかった。義妹たちが、大学で既に噂になっている美少女三姉妹、長女の真白(表紙中央)、次女の美結(表紙右)、三女の心々乃(表紙左)であることを。しかもお互い認識しない間に出会っていると言う事を。

 

真白は道案内し、美結にはバイト先のカフェで勉強を教え。心々乃には購買で買ったものを分けて。無自覚な優しさが三姉妹の心の中、かつての遊斗の面影を揺さぶる中。本当の意味で再会し、ぎこちなくもまた、兄妹としての関係性を始めていく。

 

「美結と心々乃には内緒ですからね・・・・・・」

 

「もう少しだけ遊斗兄ぃと一緒にいたくって・・・・・・」

 

「真白お姉ちゃんと、美結お姉ちゃんには内緒・・・・・・だよ?」

 

まだ呼び捨てにはできない、もどかしい距離。そんな中、真白が空きコマの時間に二人きりでデートしたり、バイト終わりに美結と二人きりで帰ったり。心々乃と二人きりで、学食でお昼ご飯にしたり。

 

(本当にみんな抜け駆けするんだから・・・・・・)

 

三姉妹、みんながみんなそれぞれ抜け駆けをして、思いを深めて。その根底にあるのは家族愛か異性愛か、まだそれは分からぬけれど。それでも、弾むように深まる絆は確かにここにあるのである。

 

恋心未満の、曖昧な心が生まれてわちゃわちゃの中で尊さを持っているこの作品。家族で男女、な作品が好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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