読書感想:義妹生活4

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前巻感想はこちら↓

読書感想:義妹生活3 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で沙季が悠太へと放った、「兄さん」という万感の思いが込められた、けれど心を切り裂くような切なさが込められた、たった三文字により二人の関係は、義理の兄妹というものに固定された筈、であった。その筈であったが、果たして画面の前の読者の皆様はその事についてどう思われるであろうか? 本当に、今抱いている思いを隠してまで関係を固定化する事なんて、出来ると思われるであろうか?

 

 

まるで何処か突き放すかのように、沙季から悠太へ関係を固定化する言葉を告げ。その言葉に、悠太も一つの理解を経て。二人は兄妹となる事を決め、そのように振る舞う事を決める。

 

 だがしかし、そう簡単に心は納得できるものではない。心に芽生えてしまった思いは、そう簡単に捨てきれるものではないし封じきれるものでもない。互いに秘めた思いが心の中から叫び、二人は関係を固定化する事は出来ず、どこかぎこちない宙ぶらりんな関係となっていたのである。

 

折しもそこに訪れる、学生にとっては一つの人生の分岐点である進路相談。三者面談に両親のどちらに出てもらうか、という所から話は始まり。進路の候補として大学を見つめ、オープンキャンパスに訪れたり。男女混合で勉強会をしたりと、関係を揺り動かすイベントは次々とやってくる。

 

 そんなイベント続きの中、悠太と沙季は否が応でも向き合う事になっていく命題がある。目をそらしてはいけぬ命題、それは「距離の近しい異性が偶然ひとりしかいなかったから、偶然好きになっただけ」という意地の悪い命題。

 

果たして、自分が好きになったのは何が理由なのか?

 

何が正しいのか分からない、けれどこの心の中、相手が異性と接しているのを見る時に湧き上がる黒い感情は何なのか?

 

未来と現在、常識と非常識、建前と本音、そして自分という個人の幸せと、家族と言う全体の幸せ。

 

何方を取って、何方を捨てる。正解は一体、何処にあるのか。

 

それぞれの場所で、その命題に指標を与えてくれる存在と出会い。自身の心、そして意地の悪い命題へと向き合っていく悠太と沙季。

 

その思いは消せはしない。重傷な思いは捨てきれやしない。

 

「すり合わせをしたい」

 

 だからこそ、もう一度ここから。あの日のように、けれど今度は違う意味で。悠太は沙季へと思いを吐露し、思いのすり合わせを提案し。思いを晒しぶつけ合い。二人は只の兄妹ではない、いけないことである答えを選ぶ。

 

 

それは玉虫色の答えなのか。それとも、いつか決壊の時を迎えてしまう事は明白な、その場しのぎの答えか。

 

それはまだ分からない、未来なんて見えやしない。けれど、確かなことは一つある。

 

それは、この答えが何かを本格的に変えていくと言う事。その変化の歯車は、もう止められやしないと言う事。

 

その先の景色に何が待つのか。読者の皆様も是非見届けてみてほしい。

 

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