読書感想:古き掟の魔法騎士 II

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前巻感想はこちら↓

読書感想:古き掟の魔法騎士I - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻の感想で私はこの作品を正に至極で至高の王道ファンタジーであると書いた。その面白さと熱さは、この巻においても変わっていないどころか更に高まっていると言える。では今巻では一体何を描くのか。前巻の中ではシドの「騎士」としての、「従者」としての活躍を描いていた。そして今巻は、シドの「師匠」としての側面と活躍を描いていくのである。

 

 

そして、その恩恵を一番受けるのは、今巻で一番成長を遂げるのは誰か。それは表紙を見てもお分かりであろう、アルヴィンの従者であるテンコである。

 

気高き亜人の国、「天華月国」。だが、暗黒教団の暗黒騎士により今はもう滅んだ国。その国こそがテンコの故郷。今でも夢に見る、国の壊滅の光景と母親の死の光景の悪夢を。

 

そんな悪夢に悩まされながらも、騎士として上へと至るべく修行に励むテンコ。

 

 だが、彼女は今、酷く焦燥感を覚えていた。何故ならば、アルヴィンを始めとする級友達の成長が著しいから。シド式の訓練は確かに成果を発揮し始め。徐々に連携を取れるようにもなりつつ、ウィルを上手く使えるようにもなり。確かに成長しつつある仲間達。だが自分はどうか。自分はウィルすら上手く使えぬ未熟者でしかない。

 

その成果と焦燥感は、学園上層部により仕組まれた四クラス合同訓練により結実してしまう。アルヴィンを始め級友達が妖精剣の実力的に圧倒的格上相手に訓練の成果を示し、華々しく勝利を収める中、ウィルを使えぬ自分は敗北を重ね仲間達の足を引っ張ってばかり。

 

「それでも―――お前は騎士になるべきだ」

 

祝勝会の夜、シドに指摘された己の心の矛盾。その正体、それは心の弱さ。凄惨な経験を経てしまったからこそ、折れてしまいそのまま取り繕って生きてきてしまった心の脆さ。

 

弱音を吐露し、受け止められ。改めて騎士になると決意し、シドに改めて騎士として、スパルタ式にも過ぎる訓練を施され。

 

だが、前を向いたとしてもその心は簡単には前を向ける訳が無い。その心の隙を突くかのように、アルヴィンに激しい嫉妬を抱く謎の少女、エンデアの手によりテンコの心は闇に墜とされ、敵へと寝返ってしまう。

 

 しかし、それは無論許される事ではない。エンデアは未だ気付かずにいた。自分が誰に喧嘩を売ったのかを。誰の逆鱗を愚かにも踏み抜いてしまったのかを。

 

「よくも我が弟子を、我が主君を弄んでくれたな。万死に値するぞ、下郎」

 

自らの血に宿る力とアルヴィンの一撃でテンコの心を救い。傷だらけとなりながらも、燃え滾るような致命的な怒りをその目に宿し。シドが見せつけるのは怒りの力。例えどんな力を持っていようが関係ない、と言わんばかりの圧倒的な力。

 

前巻にも増してより熱く、より激しく。迸るようなこの面白さ、本当に至高。そんな中、エンデアの衝撃の素顔を始めとし、世界は更に大きく広がる。

 

だからこそ胸を張って言える。正しく最高、それに尽きると。

 

前巻を楽しまれた読者様、やっぱり王道ファンタジーが好きと言う読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。