読書感想:スクール下克上 超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました

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 さて、この世界には「財政破綻」という言葉が突然ではあるが存在している。対岸の火事、とは決して思ってはいけない言葉であるのかもしれない。何故ならば、日本もいつかそうなってしまうかもしれない、という危険がどこかに存在しているからである。

 

 

実際に、この世界の作中における近未来、2040年の日本は財政破綻をしている。様々な借款を背負い、更にはエネルギーもかき集めなければいけない等問題が山積みであり、しかしその為の人員が全く足りないという、八方塞がりの状況に陥っているこの日本。

 

「この人も、能力者です。テレポーターです」

 

 その状況を打開する為、起死回生の為に打ち出されたのは百人に一人程の割合で発生する超能力者の力を利用した国家再建プロジェクト。しかし、級友でもあるアイスキネシスの能力者、坂東に苛められる日々を過ごす少年、錬徒(表紙右)には関係ない筈だった。だが責任者である大人の女性、早百合と共に現れた「サイコメトリー」の能力者、舞恋にテレポーターである事を見出され。その類まれなる能力を見出されプロジェクトの中心として迎えられ。彼の新たな日々が始まるのである。

 

想像してみてほしい。テレポート、そしてその能力の先にあるアポートという能力はどれだけ便利だろうかと。一瞬で自分のイメージした場所に移動できるのならば、どれだけ便利であるかと。

 

同じ班となった「分解再構築」の能力者、美稲や範囲内の動物を操る「ハーメルン」の能力者、詩冴の能力を最大限に生かすべくサポートに駆け回り。その希少性を保護する為に護衛として派遣された、蜂を司る能力、「ホーネット」の持ち主である桐葉(表紙左)と官舎で同居することになり。

 

 どんどんと、畏れていた坂東が小さい存在に見えてくる。彼にゴマを擦る者達が醜く、小さく見えてくる。それと比較するかのように、彼の周りには一つのグループが構築されていく。同じ能力を持ち、同じ孤独を抱える者達が。

 

桐葉の何処か人を突き放すかのような態度から見えてくる、超能力者への世間の偏見。しかし好奇の目に晒され今まで孤独を味わってきた彼女達と同じように。形は違えど、自分もまた孤独であったから。だからこそ分かる、何とかしたいと思えてくる。一途に、そして謙虚に。驕る事無く真っ直ぐに接し進む彼に、徐々に桐葉は心を開き。少女達もまた、彼に惹かれ一つのチームのように、「家族」のように纏まっていく。

 

「安心しな。俺は、最強主人公なんだろ?」

 

 だからこそ、大切な存在に手を出そうとする存在を、坂東を許すわけにはいかぬ。襲われた美稲と桐葉を守るべく。成長した心で無敵の可能性に満ちた力で。錬徒は怒りの一撃を、因縁を断ち切る一撃を叩き込むのだ。

 

逆転とざまぁの爽快感の中に、独特の重めな甘さが光っているこの作品。正に面白い。色々な意味で、面白いのである。

 

ざまぁが好きな読者様、逆転の展開が好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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