前巻感想はこちら↓
読書感想：俺は知らないうちに学校一の美少女を口説いていたらしい２ ～バイト先の相談相手に俺の想い人の話をすると彼女はなぜか照れ始める～ - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、恋とは落ちるもの。そういう意味においては主人公とヒロインである湊と玲奈はお互いの魅力に堕ちている、と言えるであろう。恋の自覚は終わった、ならば後はもう告白するばかり。普通ならばそう考えられるかもしれない。しかし、そう簡単にはいかないのが青春なのである。乙女心は風任せ、と何処かの歌が歌っていたけれど。もどかしくてこそばゆい思いは、それこそ風任せのように揺れ動いて中々に動き出してくれないのである。
「あー、実は、その人のこと好きだって、あの後気付いたんだよね」
前巻の最後、見つけた自分の気持ち。それは玲奈の事が好きである、という事。だがそんな気持ちを抱いていても、一歩を踏み出すのは簡単ではなく。職場の先輩としての顔を取っている玲奈に恋心について相談する湊。
だが、そんな事を相談されてしまっては玲奈がどうなるかはもうお分かりであろう。想い人に思いを相談する、それがどういう意味を持つのか。気付いていない湊は知らない。だが我々読者であればもう分かり切った事である。
当然、心穏やかでいられる訳もなく。見当違いの方向に時に考えてしまう湊にやきもきし、ちょっとだけ自分のしてほしい事をアドバイスの中に盛り込んでみたり。玲奈もまた、彼女なりに湊に気付いてほしいと、不器用なアプローチを続けていく。
そんな二人の関係にバイト先の揶揄い上手な同僚、舞が絡んできて。三人で映画に行くことになったり、更には湊がバイト先で連絡先を普通の客に聞かれると言う大事件が起こったり。玲奈が湊の家に急に訪問して来たり。ほのぼのとした日々の中、もどかしい思いが巡る。両片思い、あと一歩が踏み出せぬこそばゆい関係性はどんどんと円熟し、深煎りされていく。
（もう手は繋がないのかな？）
今巻で進んだ点と言えば只一つ、手を繋げるようになったと言う事。何を今さら、まだそこかと言いたくなるかもしれない。だが、このもどかしさこそが「恋」なのだ。真っ直ぐにどこまでも、お互いに思いを向けているからこそ。たった一つ、段階を進めるだけが気恥ずかしくて、進めるのにも踏み出す勇気が必要で。
だからこそ、甘い。何処までも甘さを煮詰めていくかのように。ゆっくりと丁寧に深めていくからこそ、このラブコメは心に効くのである。
シリーズファンの皆様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
俺は知らないうちに学校一の美少女を口説いていたらしい 3 ~バイト先の相談相手に俺の想い人の話をすると彼女はなぜか照れ始める~ (HJ文庫) | 午前の緑茶, 葛坊煽 |本 | 通販 | Amazon
