読書感想:月50万もらっても生き甲斐のない隣のお姉さんに30万で雇われて「おかえり」って言うお仕事が楽しい3

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前巻感想はこちら↓

読書感想:月50万もらっても生き甲斐のない隣のお姉さんに30万で雇われて「おかえり」って言うお仕事が楽しい2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様に一つお伝えしておきたい。特に、来年度から社会人となって一人暮らしされると言う読者様にお伝えしたい。親元を離れてから帰省すると、実家からの心配と早く身を固めよというサインがとんでもない事になるらしい、という事を。

 

 

前巻の感想で、大人と言うものは夏休みという学生の特権と言うものがないため、休みと言うものはほぼない、という話はしたかと思う。それは年末、というものも同じである。学生と言う時分には冬休みがあるだろう、こたつでみかん片手に年末の特番を楽しめる余裕もあるであろう。しかし、社会人にとって年末は戦場が如き忙しさであることは多く。結果的に忙殺され、年末近くまで仕事をしている人も多いのである(そして仕事の都合上、年末年始の休みが無い職種だってある)。

 

 そんな忙殺される季節、専業主夫的なお仕事の裕二とバリキャリのミオはどう過ごしているのか。その答えは簡単。裕二の帰省とミオの出張が奇跡的に目的地がほぼ同じ場所になり、二人で裕二の故郷、福岡まで向かうのである。

 

 

ついて早々、美味しい物を食べたり、福岡を案内し仕事に必要な準備をしたり。どこか秘書的な立場でミオのサポートに回る裕二。

 

そのお礼代わりと言う訳でもないが、ミオが裕二の実家への帰省に偽物彼女として付き合う事になり。二人で裕二の実家へ向かい、個性的に過ぎる家族と方言に振り回される事になるミオ。

 

 しかし、この帰省が二人の関係性に一石を投じる鍵となる。親戚に紹介され、意識せざるを得なくなり。心の何処かで、お互いへ向ける意識が変わっていく。

 

だが、二人は大人である。子供ならば、そこから更なるラブコメに発展するのかもしれない。だが、大人はじれったい。じれったくてもどかしい、それは大人だから。大人になってしまったから。

 

「ただいま、松友さん!」

 

「おかえりなさい、ミオさん」

 

 だからこそ、何か起きても表面上は変わらない。変わらず、変化すらも日常に組み込んで、何でもない日々は続いていく。だけど、そんな日々だからこそ特別。二人の何でもない関係が、大人な心地よさを持っているのである。

 

いつか何か変わるのかもしれない、変わらないのかもしれない。それは不確定な子供ではなく、大人だからこそ。だからこそ、どこか沁みるかのように。そんな名もない関係が心地よい。

 

ちょっと普通とは違う大人な甘さ、それが最後に炸裂する今巻。

 

画面の前の読者の皆様もそれを見届けて来て欲しい次第である。

 

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