前巻感想はこちら↓
読書感想:経験済みなキミと、 経験ゼロなオレが、 お付き合いする話。その2 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻の感想で私はこの作品を青春ラブコメの新たな金字塔の一つであると言ったが、それは確かであったと改めて断言したい。誰もが皆、恋に揺れるお年頃。だからこそ真っ直ぐに恋をして、青春を謳歌する。そんな彼等だからこそ、この作品は正に尊いと言えるのだろう。
だが、青春しているだけでは青春は終われない。青春だけではなく、将来も見据えなければいけない季節に来ている。未来を選ばなくてはならぬ時が来ている。
早く、君に釣り合う男になりたい。
君にふさわしい男だと、みんなからも認められたい。
変革を求められる季節の中、龍斗の心の中に芽生えだす新たな想い。月愛の事が大好きで大切だからこそ、胸を張って隣に並びたいと言う想い。
「・・・・・・スポーツカーだったのかも、あたし」
そんな焦燥に似た想いを抱いても仕方がない程に。龍斗との関係性の変遷を経て心に安定性が出来たのか。どんどんと月愛は己のペースを龍斗の前で出し始め。加速していく彼女に置いて行かれたくないとまた、龍斗も予備校に通いだしたりと必死に加速を開始する。
そんな中、二人で頑張った体育祭を経て巡り来るのは文化祭。海愛と絆を戻す一歩を踏み出す為に。月愛と龍斗は二人で係へと立候補し、三人での活動が始まる。
だが、それはある意味で間違いだったのかもしれない。確かに方策としては良かったのかもしれない。
「・・・・・・加島くんって、優しすぎ」
だが今、海愛は微妙な時期である。龍斗への思いを断ち切ろうとしているけれど、簡単には断ち切れず彼の一挙手一投足に心を揺らし苦悩する。割り切れる大人では出来ない、子供だからこその時期である。
そんな海愛と接するのは、これまた駆け出した事で何処か歩調が合わなくなり始めている龍斗と月愛。もうお分かりであろう。まるで大量に火薬が詰め込まれた倉庫の前でキャンプファイヤーするようなもの。些細な誤解とすれ違いが爆発を招き。海愛と親しげにしていた龍斗へのヤキモチも相まって。彼女から距離を取り、二人は離ればなれとなってしまう。
更に襲い掛かる、月愛の友人である笑琉の忘れられぬ恋から始まる誤解。龍斗が通い始めた予備校での先輩である柊吾も絡みめくるめく。
それでも、だとしても。断ち切るべきものを必死に断ち切り走っていく。大切にしたいと思った彼女の元へ。
「好きなんだから、一緒にいればいいんだよね」
親友の恋を見て、ようやく気付けた本当に大切な事。短い青春の一瞬の中、本当に大切にするべき事。もう一度、絆を強く結び直す月愛と龍斗。
だが、水面下で揺れるのは龍斗の心。海愛が彼を忘れられぬように、彼もまた海愛の影を心から簡単に消しきれず。必死に自制を保つ心に一滴の不穏が波紋を齎す。
だが、それもまた等身大。大人じゃない、アニメじゃないからこそのリアル。
果たして、巡り来る冬に何が待っているのか。
画面の前の読者様も是非、見届けてほしい。
経験済みなキミと、 経験ゼロなオレが、 お付き合いする話。その3 (ファンタジア文庫) | 長岡 マキ子, magako |本 | 通販 | Amazon