読書感想:飛び降りようとしている女子高生を助けたらどうなるのか?4

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:飛び降りようとしている女子高生を助けたらどうなるのか?3 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、毒親から助け出したり疑似的な親子関係をしてみたり。小鳥の心を救い、支え続けている我らが主人公、祐介である。そんな彼の家族関係、及び今までの歴史についてはあまり語られてこなかった訳であり、そういう意味においては、彼の方が現状謎な存在である。そんな彼の過去に光を当て、小鳥が彼の周りの人間関係に切り込んでいくのが今巻である。

 

 

前巻の最後、母親から来た帰宅要求。その要求をのみ、バイト先から丸々冬休みを休んでいいと言うお達しを貰い。祐介は小鳥を連れ、片道三時間以上の場所にある故郷へと里帰りする。

 

 かの故郷で待っていたのは、農家を営む元ヤンで破天荒な母親の麻子。祐介とは対照的な性格である、不登校な弟の雄斗。そして祐介に好意を抱きながらも結局言い出せなかった幼馴染の奈央子である。

 

「結城さんとは絶対に別れません。私は結城さんを愛していますから」

 

当然、奈央子にとって小鳥は許容できる存在ではない。邂逅も束の間、祐介から離れろと迫ってくる奈央子に小鳥は毅然と思いを伝え。その思いの強さに、奈央子は一旦の退却を余儀なくされる。

 

だがしかし、波乱はそれだけではなかった。その呼び水となるのは、小鳥の良い所でもあるその優しさ。引きこもりで兄には勝てぬと嘯き、燻っていた雄斗は彼女の優しさに触れ。いけない事だと分かっていても彼女に好意を抱いてしまい、彼女を賭けて祐介へと挑んできたのである。

 

戦いの武器となるのは、兄弟にとって父親との思い出でもある野球。普通に考えれば絶対に勝てる訳もない。だけど、例えちっぽけでも譲れないと。奈央子をコーチにつけ、付け焼刃でも挑むべく、雄斗は必死に策を練る。

 

「全力を出して挑んだ負けはただの負けじゃないわ。大きな大きな『前進』よ」

 

 けれど、所詮は付け焼刃。自然に努力を続け成長していく祐介に勝てる武器にはならぬ。だが、それは雄斗にとって大切な『経験』となる。彼を『前進』させる、背を押す経験となるのである。

 

「分かってても、やってみなくちゃ悔いが残るじゃない」

 

そして奈央子も改めて祐介に告白しフラれ、恋を超えて『前進』する。改めて自分の熱中できるものに向き合い、新たな目標を見つけ出し。恋の残滓を振り切り、走り出していく。

 

「よし、分かった。しよう」

 

そして奈央子に押し付けられた「あるもの」が、まるで意趣返しの時限爆弾のように炸裂し。祐介もまた、一歩。小鳥との関係を『前進』させていくのである。

 

変化が前進を呼び、甘さがじんわり深まる今巻。ここから先はカクヨムで。是非追いかけていきたい。

 

シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

飛び降りようとしている女子高生を助けたらどうなるのか?4 (角川スニーカー文庫) | 岸馬 きらく, 黒なまこ, らたん |本 | 通販 | Amazon