前巻感想はこちら↓
読書感想:クラスのギャルが、なぜか俺の義妹と仲良くなった。2 「おかえり、キミを待ってたよ」 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、この作品の主人公である慎治とヒロインである結愛の、もどかしくてこそばゆい恋路というのはここまでこの作品を読まれている読者様であればご存じであろう。今まで慎治の複雑な家庭事情が語られてきたわけであるが、画面の前の読者の皆様は気になられたことは無いであろうか。結愛と紡希の家族事情はどうなっているのだろうか、と。この作品の主要登場人物は誰しもが事情を持っており、心に癒えぬ傷を抱えていると言ってもいい。その事情の一端、結愛の家族について触れていくのが今巻である。
作品中の時間軸で始まる夏休み。普通のラブコメであればイベント満載の非日常。しかし前巻で慎治はケガをしてしまい、中々にイベントが発生しない、と思われたかもしれない。
だがそれは新しい非日常の始まりであった。慎治のお世話と言う名目で父親不在の家に彼女が泊まり込み。食事の世話からお風呂の世話まで、様々な世話を焼いてくれることになる。
怪我が少しずつ癒えていく中、紬希と一緒にプールに入ったり。海外遠征から帰国した父親と結愛も加わり家族だんらんを楽しんだり。更には結愛が制服が可愛い店でのバイトをする事になり、気になって訪ねてみたり。
賑やかで楽しい日々の中、慎治の家族と過ごす中で見せる笑顔。対し、自分の家族の話題になると見せるどこか寂し気な顔。気になるけれど、デリケートな話題だから中々触れる事が出来なくて。躊躇している間に、結愛は帰省し二人は一旦、離ればなれとなる。
対し、自分達もまた家族へ挨拶に行くために動き出す慎治達。紬希の母親の墓参りにいった先で父により仄めかされるのは、彼女の父親と言う未だに語られぬ存在の一端。彼女の母親しか知らぬ自分にとっては全く未知の相手であり、慎治の父親にとっては忌むべき相手。
「家族が四人だった時のことなんだけど」
そして結愛との再会の後、皆で出かけた夏祭りの中、結愛は抱えた事情を慎治へ明かす。自分の過去に何があったのか、喪失の先に何があったのか、そしてそこに絡みつく自分の拭いきれぬ後悔を。
「思い出と戦っても勝てねぇんだよ、そんな無茶な勝負じゃなくて、こっちに目を向けろよ」
その思いを受け止め、慎治は彼女がいてくれたからここにあるものを告げ、彼女を励ます。思い出と言う自分の後ろにあるものではなく、未来と今と言う自分の目の前にあるものを見てくれと背を押す。
更に絆は深まり、また一歩甘さが深まり。更に糖度が上がって面白くなる今巻。
シリーズファンの皆様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
クラスのギャルが、なぜか俺の義妹と仲良くなった。3 「キミと過ごす夏、終わらないで」 (ファンタジア文庫) | 佐波 彗, 小森 くづゆ |本 | 通販 | Amazon