読書感想:義妹生活2

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前巻感想はこちら↓

読書感想:義妹生活 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、私はこの作品を表紙の二人が本当の意味で「家族」となっていく作品と評したが、画面の前の読者の皆様もお気づきであろう。一口に「家族」と言っても色々な形があり、共に暮らしているうちに距離感が変化していく事も、義理の家族であるならば往々にしてある事、と言っても過言ではない事を。

 

適切なほど良い距離感を今は保てているとしても、果たしてこの先もずっとこの距離感のままいけるのか。敢えて踏み込まなければいけない時もあるかもしれないし、もしかしたら別の形に深まっていく事だってあるかもしれない。

 

 その可能性の萌芽が本格的に始まるのが今巻であり、沙季の中に新しい感情が芽生え始めるのが今巻なのである。

 

徐々に夏休みも迫り始める中、高校生にとっては外せぬイベントが容赦なくやってくる。その名は定期テスト。悲喜こもごも溢れるかもしれぬ、夏休みを迎える為には欠かせぬ試練。

 

その試練を無事に乗り切った悠太。が、しかし。対照的に沙季は苦手科目でつまずいてしまいめでたく追試となってしまう。

 

追試を乗り切るために勉強に励む沙季。そんな彼女を助けんと、友人達にアドバイスを受けながらも悠太は彼女に勉強を教えたり、集中できる音楽を探したりと陰に日向にサポートに奔走する。

 

が、しかし。彼がいるからこそ安心できる、支えられている彼女の心を揺らす存在が一人。悠太のバイト先の先輩である栞である。

 

珍しく帰りが遅いと不安になって。親から知らされた、職場の先輩とレイトショーを見てから帰ってくると言う知らせに心揺らして。

 

何となくもやもやしてしまって、「おかえり」と声をかけたくて。けれど空回りしてまた彼に助けられてしまって。

 

それどころか、自分でも理由の分からぬままに悠太と同じバイト先の面接を受ける事を決めてしまって、帰りが遅い事に焦る悠太に嘘をつき、どんどんと袋小路に入っていって。

 

今巻、悠太は特に何も考えず、ただ「兄」としての行動をとっている。寧ろ変化していくのは、沙季の心。どうしようもなく気になってしまって、まるで彼の側にずっといたいとばかりに、彼の手の届く範囲に自ら収まりにいかんとするようなその行動。

 

その根底、今まさに生まれたその気持ち、その名は。

 

Q・おまえの醜い感情の正体をひと言で述べよ。

 

A・嫉妬です。

 

「彼女」を羨ましい、二人の間に入りたい。その嫉妬、その奥底の想いにまだ名前はないけれど。その決断は、きっと本当に何かを変える鍵となる。

 

一日ずつ、何でもない日々を丁寧に重ねながらも確かに始まる変化。それは何処か痛くて苦い。

 

前巻を楽しまれた読者様、もどかしい距離感が好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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