子供の時に、公園で砂山を作った原体験。そんな体験がある画面の前の読者の皆様も多いであろう。どこぞの海岸で夏に行われるサンドアートの選手権で、こんな作品が作れるのかと思わず舌を巻いた読者の皆様もおられるであろう。
そう、よく考えてみると砂とは自由な形に組み立てられるのである。どんな形にもくみ上げることのできて、応用性のきくものなのである。
では、もしそんな砂を自由に扱える代わりに、それ以外を扱えないとしたらどうなるだろうか。その答えの全てはここにある。
とある異世界に存在するマグレフ帝国の第五皇子、ホルス(表紙中央上)。彼は今、見渡す限り何もない砂漠に只一人立っていた。それは何故か。その理由は、祖国から追放され「死の砂漠」とも呼ばれるこの場所へ放逐されてしまったからである。
普通であればどうしようもないこの状況。しかし、かの死の砂漠はホルスにとっては寧ろ楽園とも呼べる世界であった。
なぜならば、彼が唯一使える魔法は「砂魔法」。砂を操るだけのその力は、砂漠と言う素材が無限にあると言っても過言ではない環境においては無敵にも近い力を持っているのである。
まずは手始めと言わんばかりに、巨大な砂の城を創り出し、新天地でのんびりと暮らそうと決意するホルス。
が、しかし。この「死の砂漠」においてオアシスも持ち、城も持ち合わせる彼はどれほど魅力的に映るのか。魔獣との戦いの中、他国より追放された少女、イシス(表紙中央左)との出会いから、彼の周りには種族問わず、様々な者達が集合していく。
ハニーアントと呼ばれる蜜を生み出す魔獣の女王であり、ホルスに名前を貰った事で人型となれるようになったメル(表紙右下)。
ホルスに謎かけを持ち掛け、彼を気に入り眷族となったスフィンクスのフィー(表紙右上)。
まるで、彼の人柄に惹かれるかのように様々な者達が彼の周りに集い、砂漠に住まう魔獣達との戦いを繰り広げる中、新たな秩序が彼の周りに作られていく。
その動きは、まるで「国造り」かのように。彼を王として、新たな国が砂漠に今、生まれつつある。いずれも強力な力を持った者達が集まり、一つの国へと変わっていく。
「大丈夫だよ。なんとなくそんな気はしていたからさ」
だが、そんな中でもホルスは変わらずマイペースに。しかしその裏、砂漠に悪意の芽は確かに忍び寄る。
なろう系らしい国造りのお話であり、肩の力を抜いて国づくりが楽しめるこの作品。
なろう系の作品が好きな読者様、国造りの様子を見てみたい読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
砂魔法で砂の王国を作ろう ~砂漠に追放されたから頑張って祖国以上の国家を建ててみた~ (ダッシュエックス文庫) | 空地 大乃, 赤井 てら |本 | 通販 | Amazon