読書感想:お嫁さんにしたいコンテスト1位の後輩に弱みを握られた

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は周囲の人にひた隠しにしている秘密の趣味というものはあられるであろうか。この趣味は知られてもまあ良いけれど、この趣味だけは知られたくないと言う秘密はあられるであろうか。

 

 そういう趣味をひた隠しにする理由とは、案外自分のイメージにそぐわないという理由が多いのかもしれない。ではもし、そんな秘密を誰かに知られてしまったら?

 

 そんな状況に陥ってしまったのが今作品の主人公、大翔である。勤勉実直、常に成績は学年一位。正に孤高の秀才と言わんばかりの彼は他人に弱みを見せないようにしていたのに、猫に猫のような言葉遣いで話しかけると言う場面を撮られるという失態を犯してしまう。ではその撮影者とは誰か。それこそがこの作品のヒロインである「お嫁さんにしたいコンテスト」で一位を獲得した、女子力の塊のような後輩、優衣奈である。

 

一見すれば接点なぞどこにもなさそうに見えるこの二人。だが実は二人とも、「神崎真桜」という声優を推す者同士という意外な共通点が存在していた。

 

「先輩? 私が弱みを握っていること、忘れちゃったのかにゃあ?」

 

大翔の痴態という弱みを脅しの武器に使い何処か小悪魔的に、優衣奈は大翔を半ば強制的に自身の推しへの活動へと巻き込んでいく。

 

 だがそれは、大翔にとっては全くの未知の体験であると同時に、得難き経験であり未体験の面白さを齎してくれるのであった。

 

いつもは一人、こっそりと行ってきた。だけど優衣奈は隠す必要もない、いわば同士で在り、打てば響くと言わんばかりに愛は似た者同士であり、同じ熱を共有できる。

 

ある時はコラボカフェにリアル攻略ゲーム、またある時は二人でアニメを自宅で見たかと思えば、東京で行われるイベントの為に二人で計画を立てて遠征したり。

 

 そんな正に非日常の日々の中、優衣奈は影に日向に大翔にアプローチをかけ続け。だけど声優バカな大翔は気付いてくれなくて、思わず溜息を付いたり頬を膨らませたり。

 

「というわけで先輩は、わたし以外の人と付き合っちゃダメですからね?」

 

けれど確かに二人の距離は近づいていく。同じ熱を共有できるからこそ繋がれる絆の形があるのも確かであり、まるでじゃれ合うかのように言葉のキャッチボールを交わす二人の様子が微笑ましいのも確かなのである。

 

だからこそこのラブコメは甘い、そして面白いのだ。

 

レベルの高い王道ラブコメを読みたい読者様、会話劇が好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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