読書感想:星詠みの魔法使い 1.魔導書作家になれますか?

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方はスパロボと呼ばれるゲームをご存じであろうか。もしご存じであれば、ゲーム内に登場するとあるパイロットにつけられた異名、「流星」とは一体何から来た異名かご存じであろうか。

 

簡単に燃え尽きてしまうから流星なのか? 否、簡単には燃え尽きぬからこそ流星なのである。そして流星は、一瞬の輝きに全てを賭して全力で駆け抜けていくものなのである。

 

とある異世界に存在する、世界最高峰の魔法使い教育機関、ソラナカルタ魔法学校。この学校は、日ごとに構造が変わる不思議な校舎に始まり、地下に広がる魔法生物の巣食う広大な地下迷宮など、世界の不思議の半分はここで起きていると言われるほどに非常識に満ちた、正に魔法使いの学校と言うべき学校であり。

 

 そんな、非常識の権化とも言える学校で数多の魔法使いが己の倫理観のままに己の興味を探求し、時に自らの研究成果をぶつけ合わす世界に一人の少年がいた。かの者の名はヨヨ(表紙右下)。五年生という高学年でありながらも、魔法使いの覇気など一切ないまったりとした少年である。

 

だが、彼にはそうなってしまった事情がある。それは自らの提唱した魔法、「流星魔法」により相棒に深い傷を負わせてしまったという過去。言わば彼は燃え尽きた流星。

 

 だがしかし、彼の燃え尽きた心の奥底、燻る火種に炎を灯す出会いが彼に訪れる。その炎の運び手の名はルナ(表紙中央)。かつての相棒の妹であり、魔法国の有名な貴族出身の少女である。

 

「わたし、魔導書作家になりたいんです!」

 

ルナは見果てぬ壮大な夢、魔法使いの世界ではまるで夢物語のような夢を口にする。自分は魔導書、物語で人に魔法を使わせる魔導具の作り手になりたいと。

 

 その夢を語る彼女の目はまるであの日の相棒のよう。幾度となく関わる事になり結果的に面倒を見てしまい。そんな中、ヨヨは己の過去に直面し再び闇の中へと沈む。

 

そんな彼に舞い込むルナの窮地の一報。けれど彼の心は未だ挫けたまま、踏み出す事もままならなくて。

 

 だが、その時。ヨヨはルナが秘めてきた本心、不安に押しつぶされそうになっていた中、自分が救いとなっていたという本音に触れる。その心の中、沸き立つのはもう一度立ち上がれと叫ぶ熱き想い。

 

主人公だと言われた自分が腐ったままでいいのか? 否、そんな事は無い。理屈も過去も全て投げ捨て、今まだ守れるものの為に立ち上がらずしていつ立ち上がる?

 

「いつまでも、腐っているわけにはいかないよな」

 

「ちゃんと見ておけ。ここからの俺はちょっと最強だぞ?」

 

―――さぁ、魔法使いの物語を始めよう。

 

 輝く事を恐れ震えていた小さな星が再び空へと駆け上がり、あの日に惚れこんだ最強は今、再び目を覚ます。

 

何処までも圧倒的なファンタジーの中、己の心の中の理念に全力を賭ける魔法使いたちが全力で駆け抜ける、まるで流星のように。

 

だからこそ心が熱くなる、心に面白さの風が吹き込む。故にこの作品は真正面から面白いのである。

 

王道ど真ん中のファンタジーが好きな読者様、魅力的な登場人物が好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

星詠みの魔法使い 1.魔導書作家になれますか? (オーバーラップ文庫) | 六海刻羽, ゆさの |本 | 通販 | Amazon