前巻感想はこちら↓
読書感想:中古(?)の水守さんと付き合ってみたら、やけに俺に構ってくる - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻の感想で私が未だチェリーボーイであるのを明かしたのはさておき、今巻の感想である。前巻のあの命がけ的な告白の後、本当に付き合いだした里久と水守さん。だがしかし、二人の交際はまだ、周りへ向けては秘密であった。
だがしかし、着実に二人の世界は構築されていく。甘えられるだけではなく、甘えたい。どうしたって一歩進んだ関係を望んでしまう。
「恋人の私にもまだ距離があるのに、涼音ちゃんばっかりずるいなぁ、なんて。・・・・・・里久君が女の子を苦手なんて、知ってたはずなのにね」
皆のいないふとした時間の秘密の遊戯、そこであらわとなる二人の距離にやきもちを焼いてどうしようもなく嫉妬してしまったり。
「・・・・・・私って、里久君と一緒にいてもいいのかな」
涼音にも明かせぬ交際の秘密、だがそれを知らずとも自分は後輩として側にいたいと言う涼音の光に臆し、思わず心の不安を口にしたり。
未だ二人は臆病なまま、それはお互い心に過去の傷を抱えているから。その傷が、まるで枷のように二人を縛ってしまっているから。
だが、枷であれば解き放つ事はできる。恋人だからと全部を知る必要なんてない。抱えているものを知らずとも、少しでも分け合えるような二人になっていけば良いだけ。
そう、今巻は里久と水守さん、二人が過去に抱えた秘密をお互いに晒す巻であり。全部曝け出して受け止め合って埋め合って。本当の意味で二人が恋人同士になっていく巻なのである。
「このまま離したくないくらい、水守のことを愛してるから」
弱気をさらけ出した水守さんを受け止め、里久は力強く告げ。
「里久君の想いを利用したあなたを、私は許さない―――もう二度と私の里久君を侮辱しないで」
再会した里久の因縁の相手へと、水守さんは真剣に、毅然と叩きつける。お前が彼の事を悪く言うのは許さない、と。
そう、二人は互いに似た者同士。優しすぎた、純粋過ぎたが故に背負わなくていい傷を抱え込んだ者同士。そんな二人だからこそ、お互いの抱えた傷がよく分かる。どれほどの痛みか分かる。だからこそ繋がれたのだ。この広い世界で、まるで奇跡のように。
「覚悟してね―――里久君のこと、離さないから」
甘噛みするかのように、悪戯な笑みと共に突き付けられるは、ずっと一緒の誓いの言葉。
誰にもに知られなくたって良い。分かり合う二人と仲間がいればいい。
何処かほろ苦くも確かに甘さが口の中で溶けだす、まるでミルクを固めた氷を舐めるかのようなこの作品。
甘いだけではないラブコメを読んでみたい読者様にはお勧めしたい。
きっと貴方も満足できるはずである。
中古(?)の水守さんと付き合ってみたら、やけに俺に構ってくる2 (講談社ラノベ文庫) | 弥生 志郎, 吉田 ばな |本 | 通販 | Amazon