読書感想:探偵くんと鋭い山田さん2 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる

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前巻感想はこちら↓

https://yuukimasiro.hatenablog.com/entry/2020/05/25/235922

 

さて、表紙からして仄かな色気すら感じる雪音な表紙であるが、今巻では水着、及び海のシーンはあるのかと聞かれると水着はあれど海はない、そう答えるしかない次第である。

 

やはりこの作品の根底は和、雪音、雨恵の三人による探偵の推理である。そして今巻では探偵を続けることによって、少しずつ雪音と雨恵の心中の変化が巻き起こってくる場面も大切な場面となってくる。

 

今巻で待っている三つの謎。一つ目は、クラスメートから依頼されたオンラインゲームの仲間を、オフ会の中から見つけ出してほしいという依頼。又聞きでしか知れぬ状況とそれぞれの言動の中から、まるで安楽椅子探偵のように要求される推理。

 

二つ目の謎、それは担任から持ち掛けられた彼女が在校生時代に紛失した、部誌での原稿探し。三つ目の謎、同級生から持ち掛けられたのはSNS上での繋がりしかない友達を探すという事。

 

今と過去が絡み合う、三つの日常の中に溢れる小さな謎。だがしかし、この三つの中には前巻にも増して誰かの様々な思いが込められている。そして、雨恵と雪音の和を巡る感情もまた、探偵の中で変わっていくのだ。まるで込められた思いを見つめるごとに、少しずつ心の中で思いが知らぬ間に醸成されていくかのように。

 

雨恵は知らぬ間に距離を自然と詰めていく。踏んだり肩を顎に乗せたり。時に雪音と和の関係にちょっとやきもちを焼いたり。それは気が付かぬ間に彼の事を彼女なりに気に入っているから。これくらいなら彼は何とも言わないと、きっとわかっているから。

 

対し、雪音もまた時折一撃で終わらせるかのように、距離を近づけていく。

 

「だって、雨みたいにはなりたくないですから」

 

自分の言葉で笑う和。なのに何故か、心にカビが生えるのを感じて彼を困らせてしまったり。

 

「戸村くん。わたしのこと視てもいいですけど―――約束は守ってくださいね」

 

自分が自分でいれる唯一の場を彼に知られて。だけど彼なら言わないと信じられるからこそ彼に優しく釘を刺して。

 

「それは・・・・・・それはダメです・・・・・・ダメ!」

 

そして最後の事件の最終盤、まるで火曜サスペンス劇場の最後のように端まで追い詰められた「犯人」の元に行こうとする和を必死に引き留める、涙すら浮かべて。彼にそちらに行ってほしくないと言わんばかりに。

 

変わりゆく思いは和も同じ。彼の中で変わりゆくもの、それは「探偵」という職業への思い。

 

だけどまだ、探偵不十分なのだ。まだまだ彼等を取り巻く世界は、探偵を求めている。

 

そして、彼等は三人そろって探偵なのである。雨恵が推理し雪音が整理し、和が最後を引き受ける。それが彼等の「探偵」の形なのである。だからこそ三人は三位一体の探偵なのだ。

 

深まる思いは日常の中の謎に彩られ、まだまだ読みたいと思わせてくれる事請け合いである。

 

だからこそ、本当のお楽しみは、きっとここから。

 

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