突然ではあるが画面の前の読者の皆様、貴方は日常のふとした瞬間、ふとした謎に興味を抱きその謎を突き止めようとしたことはあるだろうか。その一歩は、もしかすると探偵の始まりなのかもしれない。
部隊はとある高校。そこに入学したばかりの少年、和。彼の親は探偵である。しかし探偵と言う職業故に家族の絆に罅が入ってしまった、どこか不憫な少年である。
彼が自らの親の職業を話してしまったから、彼の元には様々な日常の謎が持ち込まれてくる。
誰かの恋人が浮気しているかも、という疑惑を解いてほしいという依頼。
図書室にあった表紙しか残っていない絶版ライトノベルの物語、犯人を推理してほしいという依頼。
美術部で誰かによりナイフで傷つけられた絵、傷つけた犯人を捜してほしいという依頼。
そんな依頼へと首を突っ込み、和を振り回しながらも勘と機転と論理で解決していく、この作品における探偵が教室で彼をまるでオセロのように挟む双子の山田姉妹である。
気だるげでちょっと不思議な姉、雨恵(表紙)が率先して首を突っ込み、勘と飛躍の論理でズバリと真実へと近づき。
対照的に、驚異の知識量を持つ妹、雪音が論理と推理、データを積み重ね多角的な視点から真実を解き明かす。
そんな双子の探偵に振り回される中、和の内心も少しずつ変化していき自分だけの探偵像を見つけ出していく。
まるで探偵と探偵が並び立つように。そう、彼にとって雨恵と雪音は大切な「探偵」の一部なのだ、もう既に。
「山田さんはもう、俺にとっての「探偵」の一部だから」
自分だけじゃ解けない謎がある。だけど二人と一緒にならば解き明かせると信じてる。だからこそ、三人じゃないと駄目なのだ。
その結論に絆されるかのように、姉妹の内心もまた変わりゆくのだ。
雨恵だけでいいと思っていた、自分には代わりがいくらでもいると思っていた雪音は彼に心を救われ、彼の事を気になり出し。
雨恵の変化を近くで見て、彼のおかげで世界が変わった雪音は、自分にとっての「探偵」には彼が必要なのだと気づき。
来週も探偵、できるといいな・・・・・・
不意に零れたその内心こそ、変化の証。そして、もしかすると恋の始まりかもしれない萌芽の欠片。
そう、この作品は昨今のまるで溺れていくような甘さはない。言うなれば、教室の隅っこで推理に挑むジュブナイルなのだ。だけどそのジュブナイルは今になってはもうノスタルジーすら感じさせるのである。そして懐かしさこそが、今の時代に楔を打ち込むかのようにどこにもない味を出しているのである。
だからこそ私は今言いたい。どうか今、この作品を読んでもらいたい。今のラブコメ戦国時代、ラブコメ飽和時代に必要なのはきっとこんな作品な筈。ほんのりと甘い、そして瑞々しい。だからこそ今、この作品は面白い。
どうかこの作品が続刊してくれることを切に願う次第である。