読書感想:お姉ちゃんといっしょに異世界を支配して幸せな家庭を築きましょ?2

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前巻感想はこちら↓

読書感想:お姉ちゃんといっしょに異世界を支配して幸せな家庭を築きましょ? - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、この作品は正しく怪作と呼ばれる部類の作品であり、前巻の感想で私の語彙力ではこの作品の面白さを語るのは難しいかもしれぬ、という話は前にしたであろう。先にお断りさせていただくが、それは今巻でも継続である。寧ろ今巻では、より混沌が深まっていると言えるのである。

 

 

前巻で示された可能性、それは小織を向こうの世界へと送り、葉桜と支配者の首を挿げ替えるという事。それは誰しもが幸せになれる筈の可能性。誰も損をしない筈の可能性。

 

それを選び、行方知れずとなった小織。そして選ぼうとして、野分に阻止され異世界へは行けなかった涼。彼女をこちらの世界へ繋ぎ止める理由となるべく、日々模索する野分。しかし彼の目の前で「氷山凍」はtwitter上に復活し。まるで彼等に問いかける様に、彼等を試し誘うかのように。次々と出される指示の中、新たな異世界の片鱗が示されていく。

 

 彼女を追う為、その情報を追い進んでいく野分達。だがしかし、それは彼等や一般人達を巧妙に誘う罠のようなもの。誘導された儀式により謎の影が姿を現し、そして新たな異世界の使者が姿を現し。ここに全ての状況が一気に流転を始め、野分は否応なく自身の選択と願いと向き合わされていくことになる。

 

世界と新たな世界が重なり合い、再構築が始まる中。二つの世界に存在する自分、そこに重なる使者の思惑。幼き彼と使者が交わした約束は何であったのか。

 

そして、彼を愛する葉桜がそれに気づかぬ訳があるのだろうか。ではもし気付いていたのだとしたら、何故それを放置しておいたのか。本当の彼女の思惑とは、一体どこにあるのか。

 

 そう、何てことは無い。野分が葉桜を愛しているように、葉桜もまた同じくらいに野分を愛している。だからこそ、ある意味で望みは同じなのだ。彼と彼女、正に不可分の一心同体な二人の根底は同じ。だからこそ、彼女は本当の意味で願う。別の世界と今の世界、過去と未来の交錯するターニングポイントで。葉桜は違う自分に否定を告げ、その全てを切り刻み。まだまだ甘いと野分に告げる。

 

「素敵な世界にして、野分くん」

 

あっさりと託された世界を変える為の力。その力を手に、野分はどんな「素敵な世界」を創り出したのか。それはどういう意味で素敵な世界であるのか。

 

その答えと、彼の選択の結果はどうか画面の前の読者の皆様ご自身の目で見届けてみてほしい。

 

そして、まさに溺れるかのような愛の奔流に触れてほしい次第である。

 

お姉ちゃんといっしょに異世界を支配して幸せな家庭を築きましょ?2 (MF文庫J) | 雨井 呼音, みれあ |本 | 通販 | Amazon