読書感想:育ちざかりの教え子がやけにエモい4

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前巻感想はこちら↓

読書感想:育ちざかりの教え子がやけにエモい3 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、お先にお断りしておくが、この作品は今巻で最終巻、一区切りである。だが、これもお先に明言しておくが、決して打ち切りなどという鬱き目に遭っている訳ではない。寧ろその逆。著者である鈴木大輔先生が、この巻でたたむ事こそが良いと判断されたからこその最終巻なのである。

 

 

 

さて、ここまでこの作品を読んできた読者の皆様であればもうご存じであろう。ヒロインである、ひなたの想いは本物であり、決して虚構などではないと。それは逃げ場がないのではなく、自身から逃げ場を切り捨てたが故の偽りなき真っ直ぐな思い。だが、それと対するかのように、大人と言うものはずるいものである。何故なら、嘘がつけるから。嘘をついてでも、己の思いをそこへ誘導することが出来てしまうから。

 

 いつか、明日香と結婚するために。その前段階として、彼女の実家に挨拶するために訪れた伊豆の地。だが、そこに来たのは達也だけではない。もうすぐアメリカに留学するかもしれないひなたを始め、中学生組達も仙波監督に連れられやってきてしまったのだ。

 

「アナタですよ明らかに。小野寺先生、アナタなんだ。椿屋ひなたが恋をしているのは」

 

急遽始まったドキュメンタリー撮影、改めて告げられるは第三者から見ても明らかな気持ち。彼女は彼に恋をしている、という誰の目から見ても明らかな事実。

 

「先生にとって、椿屋ひなたとは何なのですか?」

 

そう聞かれ、改めて考え固めた結論。彼女は自分にとって「宝」。だからこそ、触れるのもためらわれるし、恋もしないと決意した。

 

「どこへでも! これから先ずっと! あたしのそばにいて!」

 

 だが、別離から二年。訪れた運命の日。明日香との結婚式の日、雄々しく成長し完全に羽化した「女」となったひなたは達也を連れ去っていく。変わらぬ想いを口にしながら、誰よりも真っ直ぐ、変わらぬどころか更に強くなった光と共に。

 

ここからが本当の始まり。先を往く女豹を追うかのように、新たな野獣は舞台に上がり、牙を突き付ける。彼と言う最高の宝を今度はいただくと。

 

 この先、どこまでも駆け抜けていくその景色の先にあるのはどんな景色か。果てなどないと言わんばかりにどこまでも、心のままに駆け抜けていくその先とは。

 

そして、見つけたものの答えとは。

 

その答えは、続きはきっと、読者の皆様各々の中にあって然るべきである。だが、まるで鮮烈な嵐のように駆け抜け、打ち上げ花火のように大輪の花を咲かせたこの作品、これを評するなら、やはりこの言葉こそが相応しい。

 

この作品は、「エモい」。青春も、大人も子供も何もかもひっくるめて、若々しくて色鮮やかで。それを全部、言語化せずに心からあふれ出る言葉のままに表現するのなら。

 

きっとその言葉こそが、相応しいはずである。

 

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