問:十四歳、中二と言えば?
答:中二病でも恋がしたい(あれの舞台は高校である)
さて妙な寸劇はここまでとして画面の前の読者の皆様、貴方は十四歳頃の思い出とはどんなものがあるであろうか。どんな事に悩んでいただろうか。
十四歳、それは大人でも子供でもない多感な年齢の時期である。何にもなり切れず、だけど何かが変わっていく時節である。
そんな中、規格外の異物と言わんばかりに年頃の子供達に紛れているのがこの作品のヒロインである椿屋ひなた(表紙)である。
まるで成長を先取りしてしまったかのように、一足お先にその身体は大人へと成長し。
考え方が違うといわんばかりに、大人のような思考と言動で周囲を振り回し。
そんな彼女を周囲は異物とばかりに遠巻きにし、根も葉もない噂を投げつけ噂で貶そうとする。
だけど、何処吹く風と言わんばかりに進んでいく彼女だって普通の年頃の女の子なのである。
十歳年上の幼馴染、教師である達也にしか見せないのは子供な素顔。甘えたがりで気を惹きたいと願っている普通の年頃の女の子の素顔なのである。
「ねえお兄」
「好きだよ」
不意に漏れたその言葉。小悪魔な顔に隠した隙間から漏れたのは彼女の本心。
そう、この作品は尊くてエモい。純粋で透明で、正に一瞬しかないこの一瞬の中、先に大人になった者達がいつか大人になる子供達にその予感を感じながら想いを巡らす、誰もがエモくて尊い作品なのである。思春期の瑞々しい感情がこれでもかと詰め込まれた、安くて下手なラブコメよりもラブコメしている、仄かに酸っぱい甘さが見所である物語である。
文学的なラブコメに触れたい読者様は是非。きっと満足できるはずである。