読書感想:誰にも懐かないソロギャルが毎日お泊まりしたがってくる

 

 さて、昨今ギャルなヒロインがラブコメにおいては幅を利かせ始め、時代のヒロインはギャル、と言える状態になってきたのかもしれない。しかしギャル、と言えば陽キャラという印象があられる読者様も多いかもしれない。だがギャル=陽キャ、というイメージばかりではヒロイン像が一極化を招くことに繋がりかねないので、ヒロイン像と言うのは流行になるにつれて、亜種が増えていかないといけないのかもしれない。

 

 

そういう意味においては、この作品のヒロインである綺奈(表紙)はどっちかと言えばファッション系のギャル、と言えるのかもしれない。彼女はテンプレの陽キャではなく、その逆の陰キャ。クラスでも常に孤高を貫く、現実の友達がいない「ソロギャル」の異名を持つ少女である。

 

「私にとってサバトラさんは、自分の命よりも大切なたった一人の親友なんです」

 

彼女の裏の顔、それは「サバトラ」のHNで活動する神絵師。彼女のネット上の親友、「IORI」とリアルでも会う事となり、待ち合わせ場所に行ったら待っていたのは、隣の席である主人公、庵。少女漫画家の母親を持ち自身はネット上で小説家としてサバトラとコンビを組む、色々な事情でクラスでは陽キャグループに属する少年である。

 

 

心をよぎるのは、散々誤解して酷い事を言ってしまったという今更ながらの自覚。家出のような形で家を出てきてしまったので行き場もなく、しかし負い目から彼に助けを求めることが出来なくて。そんな彼女を「親友」として友情を以て庵が受け止めた事で、二人は庵の家でルームシェアをする事となる。

 

生活能力皆無の綺奈、対し割と家事万能気味な庵。二人でゲームで何気なく遊んだり、風邪を引いた庵を綺奈が必死に看病したり。穏やかな日々、ネット上での繋がりを超え現実でも、二人の友情は繋がっていく。

 

その中で庵は、自分を変えたい綺奈の願いに、彼女に他にも友達を作る事を目指し、クラスメイトの双子の妹であることりの助けも借り、彼女の為に何くれとなく奔走していく。

 

しかしそんな時間は、終わりを迎える。ルームシェアを解消し家に戻った綺奈。やってくるのは毒親の手。また囚われんとする時、駆けつけてくるのはやはり庵で。

 

「俺は現実でも、もっとキミと一緒にいたい」

 

その胸にあるのは、もっと一緒に居たいと言う思い。彼女の存在に、救われたから。けれどそれは綺奈も同じ。お互いがお互いの救いである二人の同居生活はこうしてまた始まる。そして、綺奈の中にも一つ、友達を超えた感情が芽生えていくのだ。

 

もどかしくてこそばゆい、王道的なラブコメである今作品。安心して読めるラブコメを楽しみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: 誰にも懐かないソロギャルが毎日お泊まりしたがってくる (MF文庫J) : あさのハジメ, ただの ゆきこ: 本