さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。皆様は10年前、何をされていたであろうか。因みに自分は10年前というと新卒1年目、しかし新卒で入った会社で崖っぷちであったわけだがまぁそれはどうでもいいとして。10年もあれば境遇が変わるには十分な時間であり、人物像が変わるのにも十分な時間であるのかもしれない。この作品はそんな、10年前と後のギャップを楽しむ甘々ラブコメなのである。
「ねぇ、おとーさん。本当におかーさんはクールだったの?」
デザイナーとして精力的に仕事に励む青年であり、一家の大黒柱でもある青年、進。彼の大事な家族、妻の九瑠(表紙左)と娘の春。しかし、十年前のアルバムを見た娘は母親が今の姿と一致しないと首を傾げる。
それもその筈。
「わざわざ離れた席に座ったのに憂鬱だわ・・・・・・」
十年前、高校入学時に出会った時(表紙右)は、他人を寄せ付けぬクールすぎる事で入学時から有名であり。
「今日は一日離してあげないんだから!」
しかし十年後の今は、夫ラブ、娘ラブ、ワハハハハ! な無敵状態。最早何があったの、と聞きたくなる、かの劇的ビフォーアフターの、何という事でしょうという名台詞が似合う程にデレデレな奥様へと変貌を遂げていたのだから。
「でもちょっとお仕置きはしないとね・・・・・・」
十年後、妻としての彼女は愛情深く、しかし時にやきもち焼き。 進が学生時代からの友人、亮介から貰ったR18な同人誌を隠しているのを見付ければ、夜に搾り取ってあげると宣言し。
「私をからかうつもりだったの?」
十年前、まだ恋人でもなかった時の彼女はツンツンで。しかし進の粘り強いコミュニケーションに少しずつ心を開き始め、少しずつ友達になっていく。
「あなたが一体誰のモノかわからせる必要があると思うの」
十年後、妻の妹である十美子と出かけただけで、背後に般若の面が幻視出来るほどにぶち切れて一晩中搾り取って来たり。
「だから勘違いしないでくれる!?」
十年前、二人で初めてのお出かけの際は進の好きな髪型にしてきて。ナンパから助けられた事で明確に恋に落ち。
「ずっと独りぼっちの真っ暗な世界よ? 悪夢以外の何物でもないわ。でも、あなたと一緒になってからは一度も見てないわ」
そして十年後、家族になって家族が増えて。学生時代からの付き合いである亮介とその幼馴染であり現奥さんである陽菜にも呆れられるほどに。甘々で真っ直ぐ、家族として突き進んでいくのだ。
甘々が得意である雨音恵先生だからこそのど真っ直ぐな甘さが光り、二つの時間軸を書くからこそギャップが際立ちより甘いこの作品。甘々なラブコメを見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。