読書感想:衛くんと愛が重たい少女たち2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:衛くんと愛が重たい少女たち - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、「相対的に良い」という言葉が真っ直ぐな意味での褒め言葉になるのもこの作品くらいであると思うが、前巻を読まれた読者様であれば主人公の衛くんを取り囲む、身勝手な愛による包囲網はもうご存じであろう。前巻、彼はそこから飛び出すべく一歩踏み出し京子の元へ向かった訳であるが、果たしてあの凛と瑞希が大人しくしているかと言うとであるが、秒でそんな事はないと断言できるのがこの作品の辛い所である。彼女達が衛の変化を簡単に許容するわけもない、のであるやはり。

 

 

「さすがに甘やかしすぎたか」

 

「仲直り、したい・・・・・・です」

 

瑞希に関しては、まぁまだマシな方向であるのかもしれない。自分は衛を好きではない、けれど衛は自分を好きでなくてはいけないという心の元、厚顔無恥にも仲直りを申し出る。対し、凛は所有物の反抗に理性を失くし獣に還る。もはや人間のやり口ではないマーキングで、衛の所有権を示す。彼女がいる家に衛が戻りたいと思う訳もなく。京子の居候する祖母の家に入り浸る時間が増える中、彼等の住まう地へと京子のかつての仲間である桂花がやってくる。

 

京子の心を射止めた衛の事が気になり、少しずつちょっかいをかける中、その裏では瑞希に協力し離間の策を講じ。そうとも知らず衛は桂花とも仲良くなっていく。

 

「ぼくは誰のモノでもない!」

 

他者との関りが成長を招くものなのか。京子の隣に立つに相応しい者となるために。凛への恐怖ではなく怒りと反抗心を前面に押し出し、凛を拒絶する衛。だがその成長は、あまりにも万人を惹きつけるものであったらしい。小動物のようでありながらも強靭で純粋な彼の人間性に桂花もまた惹かれだし。気が付けば京子に内緒で衛と行動し、まるで見せつけるかのようにキスを交わす。

 

それを許せる京子である訳もなく、絶交の危機に陥る二人。そんなのは嫌だ、特に京子の涙は見たくない。一度途切れた二人の絆を繋ぎ直すべく、衛は二人の間で奔走する。

 

「・・・・・・京子には、桂花さんが必要だと思うんです」

 

必要だと思うから、彼女が大切に思っているから。その思いを真っ直ぐに、例え怒られる事になってでも。その真っ直ぐな思いが京子の心を動かし。もう一度二人の間を繋ぐ鍵となっていく。

 

それは正しく小さな一歩。けれどそれは彼の人間性があったからこそ為せた事。その姿を見、京子の心もまた揺れる。どんどんと恋の感情が膨れ上がっていく。

 

本格的な成長が始まる中、愛の包囲網がより動き出す今巻。正に読むとダメージを受けるし、読むのに覚悟がいる。それでも前巻を読まれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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